10系は1973年に登場した、第三軌条用線区向けの車両である。当時の最新技術である電機子チョッパ制御を採用し、量産車では大阪市の地下鉄では初めての冷房装置を搭載した。
【前身の初代20系】
本形式は元々20系として1973年に登場、谷町線での最高速度100km/hでの急行運転を想定した試験車両として製造された。車体は30系(一部)に続いてアルミ製としたが、前面は左右非対称で額縁スタイルを採用した。制御装置には前述の通り電機子チョッパ式、当初は4両が製造され全車電動車であった。台車は30系をベースとしつつも枕バネを空気バネ化、ブレーキも30系をベースとしながら回生ブレーキに対応したほかメンテナンス性の向上など改良を加えたものである。
ところが諸々の問題から谷町線の急行運転や100km/hでの運転は立ち消えとなり、当初の目的を全く失ってしまった。一方で電機子チョッパ制御は回生ブレーキを常用できるため放熱が少なく省エネである点が注目され、中間車を増結のうえ御堂筋線への転用が決定。1975年に形式を10系に変更するとともに中間車4両を製造し8連化、翌年に営業運転を開始した。
【10系量産車】
輸送力増強と新線開通に伴う車両数確保のため、1979年から量産車の製造が開始された。車体では前面スタイルを変更しており、窓を上方に拡大したことで方向幕と灯具を窓の内側に収めている。主要機器は第1編成と同等で、主電動機は直巻電動機、制御装置は電機子チョッパ式である。制御装置は第1編成のものに比べて誘導障害対策や装置の小型化などを行っている。
また大阪市の地下鉄では初めて冷房を搭載したが、これは発熱量が従来に比べ大幅に少ない電機子チョッパ制御であり、トンネル内の温度上昇に結び付かないと判断されたためである。第三軌条集電で天井高さに余裕の無い同線に合わせて厚さ400mmの薄型冷房機を東芝と三菱が新規に開発、1両に2台搭載した。なお第1編成も当初から冷房搭載を念頭に置いており、実車での試験は同編成で実施したほか、量産車登場のころに冷房の本設置を行っている。
1979年から6年間に2次車として8連15編成が、1986年から4年間に3次車として9連10編成と1・2次車の9連化用中間車16両が製造された。3次車は主に1987年のなかもず延伸を睨んでの増備で、車体や冷房装置は1984年に登場した20系(中央線・谷町線用のVVVF制御車)で採用された技術を反映している。本形式は9連26編成の陣容となった。
【その後の推移】
■10連化
1995年から翌年にかけ、更なる輸送力増強のため御堂筋線全編成の10連化が行われた。但し古い編成では製造から20年弱が経過しており、増備は軽量ステンレス車体の新20系に移行していた時期であるため、本形式の10連化は組替で対処することとなった。内容としては第1編成から第3編成の編成を解体し、中間車は電動車は電装解除、付随車でも補機を搭載するものは撤去するなどして1700形として全車を転用。また第16編成と第17編成には先頭車だった車両を中間車化、補機類を撤去し転用している。なお先頭車4両が余剰となり廃車されている。
■リニューアル改造
製造から20年程度が経過した1998年から、第5編成以降の22編成に対してリニューアル改造が実施された。内容は前面上部の黒色塗装化、側面帯の変更、側面行先幕の設置、座席モケットや化粧板の変更、LED式情報案内装置や車椅子スペースの設置、冷房の能力向上、警笛の変更などである。また2002年度からは扉間座席にスタンションポールを設置、吊革も増設している。
2006年からは3次車10編成をVVVFインバーター制御化することとなり、対象となる大半の編成がリニューアル改造に合わせて制御装置の更新を行った。一方で既にリニューアルが実施されていた編成もあり、こちらについては制御装置の更新のみを後に実施した。元々6M4Tの編成を組んでいたが改造で5M5Tに変更され、これに伴い一部車両の制御車・付随車化のほか逆に付随車の電動車化も行われている。なおこの改造を施工した車両は10A系とされ、車番の末尾にAを付けて従来と区別しているが、これは前述の電装解除や電動車化によって本来の付番法則(百の位は本来電動車が0~5、付随車が6~9)と狂いが生じているための措置でもあると思われる。
【廃車】
初の廃車は前述の10連化に伴う組替で発生した先頭車4両である。編成単位での廃車は2011年の第4編成が初めてであったが、同編成は当初から10系リニューアルが全車終了した段階で廃車されることが決まっており、唯一リニューアルの対象外となっていた編成である。同年末からは30000系の御堂筋線への投入が開始され、2013年からは同系に置き換えられる形でリニューアル車からも廃車が発生している。今後電機子チョッパ制御のまま残存している2次車は30000系の増備と共に置き換えが進む見込みである。