923系は、先代922形の老朽化による置き換えなどを目的として2000年に登場した総合試験車、通称「ドクターイエロー」である。これまでと同様に軌道や架線の状態、信号電流の状況などを走行しながら検測する車両だが、東海道・山陽新幹線の速度向上に伴い最高速度を引き上げたほか、検査・測定精度の向上が図られている。
【車体】
700系をベースとしたアルミ製で、基本的にはダブルスキン構造だが屋根は測定機器搭載による重量化を軽減するためシングルスキン構造としている。前照灯はHID灯を追加して計6灯となり、中央部に前方監視カメラと尾灯用の窓を設けたため印象が異なる。塗装はドクターイエロー伝統の黄地に青帯であるが、黄色は922形までに比べ明るい色を用いている。なお初期のプレスリリースでは700系同様の白地に黄帯で描かれていた。屋根は車体色と同色だが、4号車のみは機器への影響を防ぐため白としている。側窓は検測用のため必要最小限のみの設置としており、海側と山側で配置が異なる。扉は5号車と1・7号車山側を除き各車1か所の設置で、1・7号車の乗務員室直後以外は700系の車椅子対応扉と同等の広幅としている。
【車内・測定機器】
車内には様々な検測機器を搭載しているが、添乗者室がある7号車を除く全車で海側に測定室・山側に通路を設けている。1~3・6号車は電気関係の測定機器を搭載しており、1号車には通信・変電所・電車線測定装置を、1・2・7号車には信号測定装置を設けている。2・6号車には集電用・検測用のパンタグラフを近接して設けており、外観上では大きなパンタグラフカバーが特徴となる。電力関係の測定時には進行方向前の車両のパンタグラフで集電、後ろの車両のパンタグラフで測定を行う。パンタグラフ搭載車の隣の車両(3・5号車)にはパンタグラフ観測ドームを設置、カメラでパンタグラフの様子を記録している。5号車は博多方屋根上にトロリ線支持金具の角度を検出する装置を搭載するほか、休憩室を設けている。4号車は軌道検測車で、測定方法を従来の3台車方式からレーザー基準装置と変位計による2台車装置に変更、高速走行時における測定精度の確保を可能とした。7号車は添乗者室で、700系C編成の普通席と同様の座席が10列(50席)設けられている。
なお各種測定機器は921・922形の先代「ドクターイエロー」に比べデータのデジタル化がなされているほか、将来の機器増設・更新に対応すべく各種装置はレールに固定する方式を採っている。また一部設備は添乗者にも見易いよう配置が工夫されている。
【主要機器】
最高速度270km/h運転を行うため、主要機器は700系と極力共通化している。機器配置は700系同様4両1ユニットを基本としながらも、7両編成のため1~3号車を第1ユニット・4~7号車を第2ユニットとした。このため700系にはない制御電動車が設定されているほか、補機類を電動車に搭載するなど変更が行われている。台車は4号車を除き700系C編成と同様のボルスタレス台車を、軌道検測車の4号車には測定枠や測定装置を設けた専用台車を履いている。
【運用】
2001年にJR東海が1編成を、2005年にはJR西日本が1編成を導入した。JR西日本所有の編成は3000番台とされているが、700系で見られるような車内設備や台車の相違はなくほぼ同一の仕様で、2編成ともJR東海が管理している。最高速度が270km/hに向上された本形式の投入で列車密度の高い日中にも検測が可能となり、従来3日を要していた東京~博多間往復の検測が2日で済むようになった。概ね10日に一度の検測は主要駅のみ停車する「のぞみ」タイプが多いが、2か月に1度は各駅に停車する「こだま」タイプで運転される。