N700系|編成別写真集 -FUKUJU TRAIN NET-

N700系

N700系は、2005年に登場・2007年に営業運転を開始した新幹線電車である。東海道新幹線では第5世代の形式で、700系に続いてJR東海とJR西日本による共同開発を実施。500系と同等の山陽区間300km/hを可能としたほか、加減速度の向上や車体傾斜システムの導入で東海道区間の時間短縮も実現している。2012年度からは改良版のN700Aが登場したほか、2009年には九州新幹線直通用として8両編成バージョンも登場している。2018年登場のN700Sは各部が大きく異なるため別項にて紹介する。

0・3000番代→2000・5000番代
X30K9

JR東海Z・X編成

JR西日本N・K編成

2005年に量産先行車、2007年から2011年度にかけ製造された16両編成の基本番代で、JR東海所属車はZ編成・JR西日本所属車はN編成を名乗る。

【車体・車内】
車体は700系に続きアルミ製だが、車体傾斜を行うため700系に比べ幅は20mm狭く屋根高さは50mm低い(先頭車は大半が更に100mm低い)。前面形状は300km/h運転と各種騒音に対応するため、遺伝的アルゴリズムを用いて最適な形状「エアロ・ダブルウイング形」を開発した。先頭部長さは700系より1.5m延長しているが、客席数を300系・700系と統一するため客室スペースを同等に確保することが必須となるため乗務員室扉や直後の客用扉(ここだけプラグドア)も特殊な形状となっている。また各車の連結面は全周幌で覆ったほか、窓・屋根・床下等は徹底して平滑化して騒音に対策している。行先表示機は初めてフルカラーLED式を採用し従来省略されていた東京方先頭車にも設置、座席指定区分表示機もLED化している。
車内は車体幅が狭くなったものの壁を薄くして従来車並みの広さを確保、その代わり窓が従来車より小さくなっている。本形式ではコンセントの設置と全車禁煙・喫煙ルーム設置が特徴で、コンセントはビジネス需要を重視しグリーン車の全席と普通車の窓側および最前列・最後列全席分を設置、仕切テーブルもA4サイズのパソコンに対応した寸法・強度とした。また喫煙ルームは3・7・10・15号車に計6室設置、強制排煙装置や光触媒脱臭装置の採用で完全分煙を図っている。客室の情報案内装置は大型のフルカラーLED式で2段表示を可能としたほか、表示内容も従来より充実している。グリーン車は座席のリクライニングに応じ座面が傾斜する機構を採用、普通車は座面構造を変更し掛け心地が向上したほかB席以外の各席の幅を10mm広げている。

【主要機器】
床下機器は700系に続きボディマウント形状であるが、本形式では更に台車もスカートで覆っている。機器構成は1ユニット4両だが、16両編成で14M2Tのため電動車4両の組と電動車3両+先頭Tc車1両の組がある。制御装置はIGBT-VVVFで主変換装置は通常型を785形[M1]・787形[M2]に、ブロアレス型を7~10号車の各車に搭載している。主電動機出力は大幅に向上して305kWとしている。起動加速度は2.6km/h/sと在来線313系に迫る高さで、最高速度までの到達を従来に比べ大きく短縮した。
台車は700系と同様ウイング式軸箱指示装置を用いたボルスタレス台車だが、空気バネを用いた車体傾斜装置を初採用した点が特徴である。急曲線の多い東海道区間では主にR2500の曲線で車体を1度傾斜させ、従来250km/hの制限があったところを270km/hで通過可能としたほか、急曲線の無い山陽区間でも本機構を用いて車体を水平に保つ制御を行っている。ブレーキは回生制動併用の電気指令式で、T車が減少したことから700系まで装備していた渦電流ブレーキは廃止された。
これら性能の向上にも拘らず、空気抵抗・走行抵抗の低減や回生制動の有効活用、曲線通過速度向上による加減速の減少もあって、東海道区間での電力消費量を約2割削減している。

なお300系・700系では所属会社によって内装が異なっていたほか、700系では台車も異なっていたが、N700系では所属会社による相違がほぼ皆無で、乗客が気付きやすいのは車内チャイムの相違程度と思われる。

【N700A性能への改造】

2013年度からは既存の0・3000番代を「N700A」並みの仕様への改造を実施している。新造「N700A」との性能統一を狙ったもので、内容はブレーキディスク締結方式の変更による制動力の強化と停止距離の短縮、車体傾斜装置の稼働区間増加(R5000未満の曲線で作動)、定速制御機能の追加などが行われている一方、台車振動検知システムの追加は見送られている。改造を行った車両は原番号+2000しており編成番号もJR東海車は「X」・JR西日本車は「K」に変更したほか、側面ロゴは従来のものに小さく「A」の文字を追加している。2015年度までに両社の対象編成すべての改造が終了している。

【増備と変遷、廃車】

開発は2002年から開始され、2003年に概要が発表されたがこの頃は「700N」を称していた。2005年3月には量産先行車が登場、同月から試運転を開始し7月には全線試運転を行った。2007年3月に量産車の搬入が始まり、Z0編成を除く必要編成が揃った2007年7月1日のダイヤ改正で営業運転を開始した。
2011年度までJR東海のZ→X編成が81編成、JR西日本のN→K編成が16本製造された。Z編成は2007年7月の営業運転開始の後、概ね年15本ペースで製造され300系を順次置き換えた。但し量産先行車であるZ→X0編成は喫煙スペースが無いなど相違が大きいこともあって営業運転には投入されず、試験用編成として各種試験に供されている。JR西日本のN編成は2007年から2010年にかけての製造で、主に500系の置き換えに充てられた。
2013年度からは前述の「N700A」性能への改造が実施された。これとは別に2014年には車内の自動販売機を使用停止しその後順次撤去が行われているほか、2015年からは同年発生の車内放火事件を踏まえ防犯カメラの増設工事を実施している。なお車内放火事件の当該編成はJR東海のX59編成で、博多方先頭車を再製造し2016年に営業運転に復帰している。

2019年には量産先行車のX0編成が廃車、2020年度からはN700Sの投入に伴い置き換えが開始されている。

 

1000・4000番代 「N700A」

G31F23

JR東海G編成

JR西日本F編成

2012年度には0・3000番代を改良した「N700A」が登場した。車体は基本番代と同等ながら前面灯具形状を変更して車両所内での視認性を向上させたほか、塗装は先頭部の帯に若干の相違があるほか「A」を強調した側面ロゴは帯にも掛かるような大きなものとなっている。車内も基本番代を踏襲しているが座席はモケットや材質の変更、普通車に関しては背摺り上部両端を張り出し頭部を受け止める形状とした。主要機器では主変換装置のブロアレス化で容積・重量の減少と騒音の低減を図っているほか、車体傾斜装置の稼働区間増加(R2500曲線を中心に動作→R5000未満で動作)に伴う乗り心地向上、台車ではブレーキディスクの締結方式変更による制動力の強化で停止距離を短縮している。またダイヤ乱れ時の回復運転を補助することなどを目的としてATC情報を用いた定速制御が採用されたほか、台車の異常振動を検知する機能も追加されている。なおN700系はJR東海・西日本の共同開発であったが、「N700A」はJR東海による単独開発である。

2012年秋にJR東海所属の1000番代(G編成)が登場。試運転を重ねたのち翌年2月から営業運転入りしている。JR西日本も2013年秋に4000番代(F編成)として同仕様の車両を投入、いずれも700系を置き換えるべく2019年度まで増備が続いた。この間2013年度製造車の途上で飲料自動販売機を廃止、2014年度製造車から便所に温水洗浄機能付き便座を採用、2015年度製造車の途上から製造時より客室防犯カメラの増設、2019年度製造車から3・15号車海側喫煙ルームの業務用室化に伴う小窓廃止が行われている。現在は1000番代(G編成)が51編成、4000番代(F編成)が24編成在籍する。

7000・8000番代 (九州新幹線直通対応車)
S11R11

JR西日本S編成

JR九州R編成

2008年、山陽新幹線と九州新幹線の直通に使用される車両として登場した。JR西日本とJR九州がN700系(0・3000番台)をベースに、路線の実情に合わせて開発された。デザインはJR西日本のデザイン顧問とJR九州のデザイン顧問である水戸岡鋭治が監修したため、同じN700系ではあるが16両のZ編成やN編成とは大きく異なったものとなっている。

車体塗装は白藍色、濃藍色と金色の帯が入っている。先頭の乗務員室扉横やトイレで窓が無い部分などにはロゴマークが入る。機器類も実情に合った変更がなされ、九州区間の急勾配に対応して全車が電動車となっている。また、台車は500系の流れをくむものとなっている。

車内構成は700系7000番台「ひかりレールスター」をベースとし、8両で1号車〜3号車は自由席、4号車〜8号車は指定席だが、6号車の半室がグリーン車となった一方、「レールスター」の8号車にあった個室は設置されていない。なお、先頭車のシートピッチはZ編成やN編成は1023mmとしていたが、このグループは他と同じ1040mmとした。そのため、両先頭車の座席は1列少なくなった。

所属会社による差異は16両編成と同様ほぼ皆無であるが、車内チャイムでの判別は可能である。

 

JR西日本のS編成が19本、JR九州のR編成が10本、合計29本が2011年3月の九州新幹線全線開通までに揃えられた。直通の「さくら」「みずほ」の他、九州内の「つばめ」、山陽区間だけの「ひかり」「こだま」でも使用される。

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