京王5000系|FTN trainseat.net

京王5000系

写真: ko5735

京王5000系というとまだどうしても先代の姿が浮かんできてしまいますが、京王に一大革新を与えそうなのは2017年に登場した2代目5000系も同様です。2018年から同線初の有料座席指定「京王ライナー」に使用され、クロス・ロング可変座席の搭載で京王では戦後初となるクロスシート装備車となりました。車体は従来の京王車には無い流線型、そして先代5000系以降引き継がれてきたクリーム色が車体から消えた点にも注目です。側面は総合車両製作所「Sustina」を用いることで平滑な側面を実現しています。また床下に目を向けると中間に大きな赤い箱が目立ちますが、これは大容量の蓄電池で力行・回生時のほか非常時に短距離の移動を行う際にも使用可能とのこと。
現在は夕ラッシュ時~深夜に新宿→八王子・橋本間「京王ライナー」に用いられるほか、朝から日中にかけては都営新宿線~京王相模原線の運用が多いようです。折角の設備ですし、「京王ライナー」の運行時間拡大も含め期待が持てる形式です。


ko50-車内全景(ロング)ko50-車内全景(クロス)

まずは車内全景、ロングシート時・クロスシート時ともにご覧いただきましょう。有料列車に使用することもあってか従来の京王車には無い落ち着いた色遣いでまとめていますが、扉上・窓上をクリーム色で通している点は印象的です。

ko50-車端部

車端部です。貫通扉を全面ガラス張りとした点、その扉上に液晶式案内装置を設けた点が特徴でしょうか。なおすべての車端部が優先席「おもいやりぞーん」とされており、吊革やステッカーで区分しています。

ko50-乗務員室仕切

乗務員室仕切です。京王で当初より10両固定を前提とした形式は何気に初めてで、他編成との貫通とも考慮しない前面形状にしたため仕切戸を車掌台側に寄せています。もっとも井の頭線を見ると1000系が類似の配置を採用していますが、壁を窪ませて握り棒を設置するなど相違点もあります。また上部には車端部と同様情報案内装置を設置しています。現代的な車内にあって、仕切戸窓の「乗務員室」の字体が従来と同様なのが却って目立ちます。

ko50-床

床は中央を木目柄、両脇をクリーム色としています。

ko50-天井

天井です。中央にラインデリア、両脇に空調吹き出し口・照明と並びます。照明は間接照明・LED式で調光・調色機能付き、「京王ライナー」運用時には電球色に近い色合いとしています。吊革は9000系で三角形を採用しましたが、本形式ではどういう訳か丸に戻っています。吊り広告は無く、情報案内装置が設けられています。

ko50-扉

扉は両開きで片側4か所、仕切りが扉のすぐ横まで迫っています。扉は9000系初期車までと同様周囲の化粧板と同色、窓も角のある形状に戻っています。

ko50-LCDko50-LCD2

情報案内装置は液晶式2画面、扉上に加え吊り広告があった位置にも配置し双方の座席モードに対応します。なお右画像の画面間に正方形の小さな穴が見えますが、これは防犯カメラのようです。

ko50-窓(ロング)ko50-窓(クロス)2

扉間の窓は関東圏ではお馴染み不等2分割、大きい方は下降式で開閉可能です。この窓割、関東圏ではお馴染みと言いつつ京王では初めての構成ですが、右写真をご覧頂くとクロスシート時に座席配置が丁度合っていることに気付きます。窓框は少しでも幅を稼ぐべく、座席回転に支障しない部分のみ幅を広げています。カーテンはフリーストップ式、座席の背摺りが高いのでロングシート時は下げ切るのに苦労しそうです。

ko50-LCクロスko50-LCロング

座席を見ていきましょう、まずは扉間の可変座席です。臙脂とベージュの張り分けは新鮮ながら落ち着いた雰囲気、独立したヘッドレストはビニールレザーの類いでしょうか。肘掛は板状として厚みを抑えた一方、肘掛部そのものは幾分座席側に張り出す格好として幅を確保、内側にはモケットを貼っています。寸法的な面では他社の類似車と同等のようで、この辺りはどうしようもない部分かもしれません。肩部にはグリップが設けられていますが、乗客が着座している状態では掴みづらい位置のように思えます。一部ガラスも用いた仕切りはかなり大型で、クロスシート時には窓側席の乗客がほぼ隠れるくらいの高さがあります。
掛け心地は可変座席としては良好ですが、グラつきのようなものは機構上の限界があるのか完全には解消されていないような感じはあります。

近鉄にL/Cカーが登場したのが1996年、これまで各社に投入された同様の可変座席は全て天龍工業製で近鉄のそれが源流にありましたが、この機構は両社が特許を取得していたのである種必然と言えましょうか。一方この座席のメーカーはコイト電工で、試行錯誤を重ねつつ作り上げたとのことですが、タイミング的にも特許の保護期間から外れた頃になります。ちなみにロングシート時には丁度座面の隙間からメーカーを記したステッカーが見えます。

ko50-LCクロス背面

背面を見てみます。背摺りに付帯設備は特に無く、脚台のコンセントと肘掛のオレンジ色が目立つでしょうか。この2つは詳しく見てみましょう。

ko50-LCクロスコンセント

コンセントは脚台に2つまとめて設置、クロスモードの時にのみ使用可能です。若干通路側に寄っており、もう少し中央に持ってこれなかったのかなあ、と思わないでもありません。基本的には前席の脚台のコンセントを使うことになりますが、最前列仕切にはそれがありませんので自席の下のコンセントを使うことになるようです。あれ、それが出来ると言うことは…(以下略

ko50-LCクロス回転レバー

座席の回転は足元ペダルを踏んで行うのが一般的ですが、本形式の座席にはそれがありません。代わりに肘掛後部にオレンジ色のレバーがあり、これを引くことで回転が出来ます。肘掛がこのような形になったのは回転機構との兼ね合いなのかもしれません。

ko50-3人掛けko50-3人掛け中肘

車端部は3人掛けロングシート。京王車はこれまで車端を4人掛けとしていましたが、中肘掛を加えたことや従来の4人掛け自体些か苦しい配置だったこともあってか変更されています。コンセントは肘掛前端に設置されており、「京王ライナー」運用時のみ使用可能です。座り心地としては機構的な制約が無い分こちらの方が良好ですが、座面を止めているマジックテープが何故か音を立てて簡単に外れてしまう点はどうにも気になります。

ko50-車椅子スペース

車椅子スペースは全車に設けられており、非常通報装置、握り棒、壁掛けヒーターに加え立客向けの腰当てが設置されました。


最後に「京王ライナー」運用時の様子を少しだけご紹介しましょう。新宿発が平日は20時台、休日は17時台から八王子・橋本に向け毎時各1本運転されます。座席指定料金は新宿から乗車するときのみ必要で、次の停車駅(府中・京王永山)からは無料開放されます。座席指定券はウェブ購入または新宿駅構内での販売となりますが、後者の場合は券売機の位置と乗車位置がある程度近くなるようにしているようで…そのせいか乗車してみると満席の車両がある一方で扉間1区画分がほぼ空いている車両もあったりで、。この制度のお蔭で券売機の類いは新宿に設置するだけで済んでおり、サービス開始にあたっての投資も幾分抑えられたでしょうか。なお新宿での乗車位置は4扉のうち両端のみで、中央寄りの扉は開きません。

ko50L-乗車位置ko50L-新宿

発車するとBGMが流れ始め、明大前で運転停車した後暫くするまで続きます。乗車したのが休日でしたので、車掌が子供に記念カードを配るなど細かい配慮も見られました。次の停車駅からは無料開放されますが、車内アナウンスでは「優先席はありません、空席をご利用ください」とアナウンス。その後は乗降共にあるものの乗車率に大きな変化は無いまま終点に到着。区間や時間帯、平日・休日の差、更には乗車位置の違いもありそうですが…
なお終着駅到着後、早い時間の列車は次のライナー運用に向け再び新宿に回送されていきます。

ko5732

なお「京王ライナー」前後の運用は平日の一部を除いて必ず回送ですが、休日の競馬開催日には前運用が府中競馬正門前からの準特急となる列車があります。当然ロングモードで運転されますので、新宿では座席のモードチェンジを見ることが出来ます。平日にはライナー運用間の回送中に客扱いする列車があったり、到着後折り返しで客扱いする列車もあるようですが、これらはどうしているのでしょう…気になります。

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