5000系

 5000系は1970年に登場した通勤型車両である。片側に5か所の扉を設けた日本初の通勤電車であり、また閑散時には座席数を増やすというアイデアでサービスの維持・向上も実現している。

【登場の背景】 

 本形式が製造された1970年頃の京阪線は、朝ラッシュの大阪付近で190%以上の高い混雑率で推移していたが、架線電圧との兼ね合いで増発も増結も難しい状況であった。また当時の複々線区間は天満橋~守口市のみで、乗降に手間取っての遅延も頻発していた。このため複々線の萱島までの延伸と架線電圧の昇圧を決定したが、完成には何れも10年は掛かる大事業となる。そのため「即効薬」として、京阪では通常片側に3か所の扉を設けていたところ5か所の扉を設けてラッシュ時における収容力の強化と乗降の迅速化を図る一方、日中以降は5か所の扉の内2・4か所目の部分に設けた自動昇降式の座席を下ろし、通常の座席として使用できるようにした点が本形式最大の特徴である。

 

【車体と車内】

 片側5か所の扉を設けたことで乗車人数が増加するほか、座席昇降機構を搭載したことで総重量が増えることとなるが、これを抑えるため車体は京阪初のアルミ製とした。当時増備を進めていた通勤車は卵型断面で丸みのある車体形状であったが、本形式は断面を垂直としたほか前面も上部庇と貫通扉付近の窪みを除けば切妻に近い形状である。扉は前述の通り片側5か所設けたが、幅は何れも1200mm、日中以降使用しない扉は上半分をアルミまたはステンレス地肌がむき出しとなる無塗装として通常の扉と区別できるようにしている。車内は当然ロングシートで、扉間・車端とも3~4人掛けの短いものである。座席昇降機構は京阪と製造した川崎重工が特許を取ったものであり、1万回に及ぶ耐久試験を行い設置したとされる。座席昇降は車庫や主要駅での折り返し時に行っており、停車中の閉扉状態で編成両端から同時操作しないと作動しないようにしている。

【主要機器】

 機器面では制御装置が当時一般的な抵抗制御、主電動機は従来に比べ軽量化された直巻電動機、ブレーキは京阪初の電気指令式とした。また大量の乗客を乗せることになるため前年の2400系に続いて冷房装置を搭載、冷却能力を高めているほか冷房装置直下に回転グリルを設置することで冷風の拡散効果を高めている。また通常座席下に設けている暖房装置については、本形式の場合扉が多く十分な数が設けられないため、1両に5基搭載した冷房装置のうち2基をヒートポンプ式として当該箇所の暖房源としている。なお1次車登場時は数少ない冷房車であったことから、日中以降は主に急行運用に充当されていた。

 

【増備と変遷】

 特別装備が多く高価なことから製造数は最低限で、増備の間隔が開いていることもあって製造の度に変更点がある。1970年に1編成(4連+3連)が製造されると翌年製造の2次車3編成は歯数比を高速寄りにしたほか2編成を7両固定に、1976年の3次車(1編成)は扉の材質変更や前面行先表示機の設置、そして1980年の4次車(2編成)は台車を変更している。なお5554号車は1980年に置石による脱線事故で大破したため廃車し2代目が製造されたが、これは4次車に近い仕様になっている。なお分割対応の2編成も実際には殆ど7両固定で運用されており、分割して運用された実績は前述の置石脱線事故のときだけである(このとき分割運用された第2編成は本形式で唯一宇治線への入線実績がある)。

【改造】

 1・2次車は1978年に昇圧対応工事を実施、また1988年には前面方向幕を設置している。1997年からは改修工事が実施され、前面意匠の変更(標識灯取替・Kマーク設置)、制御装置の界磁添加励磁制御への変更と回生ブレーキへの対応、一部機器構成の変更、第1・2編成の組替および中間運転台撤去(7両固定化)、車内の更新とマップ式の情報案内装置の設置などを行った。その後情報案内装置は中之島線開業に伴いマップ式から文字情報を行うLED式に、座席モケットは10000系同様の青地に、再度変更されている。2008年からは他形式同様塗装変更が行われ、座席モケットについても三たび変更されている。

 【運用と廃車】

 当初は朝の区間急行など混雑列車に、日中以降は急行などに充当されていた。複々線区間が延び昇圧が実現、更に8連化が進行しても他形式とは運用が分かれており、特に平日は混雑する列車に集中して投入されるため予備の無い運用が組まれる。5扉で運転される列車は通常時刻表に記載のある扉数の記載が無いため、平日朝に限っては時刻表上でも本形式が充当される列車を容易に判別できた。主に急行以下の種別で運用されているが、京橋駅に設置が予定されるホームドアには対応できないため全車の廃車が予定されており、2016年の5557F廃車を皮切りに2018年に2編成が廃車。2021年1月のダイヤ改正で遂に5扉車専用運用が廃止され、同年9月を以て全編成が運用を離脱した。

 

5551n運用離脱済み

5551F

5552n

55522018年に廃車

 5552F 

5553n2021年に廃車

 5553F 

5554n2018年に廃車

 5554F 

5555n55552021年に廃車

 5555F 

5556_n2021年に廃車

 5556F 

5557n5557
2016年に廃車

 5557F 

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最終更新:2022/4/23

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