N700Sは、2018年に登場・2020年に営業運転を開始した新幹線電車である。東海道新幹線では第6世代の形式で、N700系をベースにしつつも最新技術を採用、機器の小型・軽量化で自由な組成を可能とした点が特徴である。なお開発はN700Aに続きJR東海単独で行われている。
【車体・車内】
車体はN700系をベースにしたアルミ製、前面形状は車体左右の両脇にエッジを立てた「デュアルスプリームウイング形」としている。前照灯には新幹線で初めてLED灯を採用、開口部の形状はN700A(1000・4000番代)から更に変化し運転席からの視認性が向上している。車体断面はN700系に比べ肩部の曲線が小さくなり些か角ばった印象を受ける。塗装は基本的に白地に青帯2本を踏襲しているが、前面部のみは上の帯の更に上に帯を入れ「S」を表現している点が特徴である。
車内は普通車を含む全席にコンセントを装備した点、普通車座席にチルト機構を採用した点、全席背面にフックを設けた点、普通車・グリーン車とも300系以来となる間接照明を採用した点、情報案内装置に液晶を採用した点などが特徴である。またこれまで原則として奇数号車に2か所設けられていた洗面所を1個に減らし、今後サービスを開始する荷物置場を設けている。普通車の車内についてはこちらのページも参照願いたい。
【主要機器】
本形式の車両性能はN700Aと同等としているが、その機器構成は全く別物となった。4両1ユニットで16両編成時14M2T(先頭車のみT車)の構成はN700系と同一だが、主変換装置に高温動作・低損失・高速スイッチングなどの特性を有するSiC-MOSFET素子を採用、素子冷却を走行風により行う構造とすることで省エネ化と装置の小型・軽量化を実現。これにより主変換装置と主変圧器を同じ車両に搭載できるようになり、大きな設計変更をすることなく先頭車の電動車化や3両1ユニット化が可能となっている。主電動機や主変圧器も設計の見直しでN700A(1000・4000番代)に対し小型軽量化を実現、駆動システム全体ではN700系に比べ20%の軽量化を図っている。駆動システムの小型軽量化により捻出されたスペースには大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載、長時間停電時でも乗客の避難が可能な場所まで低速で自力走行できるようになった。
【増備と変遷】
2018年度に確認試験車(9000番代)が登場、柔軟な機器構成を生かし全電動車化や8連化しての試運転も実施された。2020年度に入り量産車が製造され、同年7月1日から4編成が営業運転に投入された。なお運用は基本的に従来のN700系と共通だが、2021年春のダイヤ改正からはN700Sが充当される一部列車が時刻表で明記されるようになったほか、毎日公式サイトにて運用が公開されている。2021年春にはJR西日本も2編成を投入しており、同社のN700系と共通で運用されている。
2022年3月末の時点でJR東海J編成が26編成(うち1編成は確認試験車)、JR西日本H編成が2編成在籍しており、前者は2022年度末までに41編成、後者は2023年度中に4編成まで増備される見込み。JR東海は2次車として2026年度までに更に19編成の増備が計画されている。更にJR九州でも西九州新幹線で8000番代として6連4編成が製造されている。
最終更新:2022/11/13