福井鉄道770形

写真: FK774

名鉄岐阜市内線と揖斐線との直通急行は運転開始時点で既に製造後50年程度経過していたモ510・520形を改装の上充当しましたが、1980年代後半ともなると製造から65年が経過し老朽化は無視できず、1987年に両線では久々となる新車モ770形を投入しました。
基本的には1980年登場の美濃町線モ880形を概ね踏襲しましたが、岐阜市内線の狭い車両限界に対応して車体幅を130mm縮小したほか、同社600V線では初めて冷房を搭載、それに伴い側窓は大半を固定窓として全体的に洗練された印象です。機器面でも同線初の高性能車となりましたが空気ブレーキは引き続きSME、台車は空気バネ式で良好な乗り心地を実現しています。

4編成が製造され岐阜市内線と揖斐線の直通急行を中心に活躍、1997年に単行運転可能でVVVF制御を採用した780形が登場するとスカーレット単色塗りから同車に合わせたクリーム色地に窓回り緑、裾部赤の新塗装に変更。同形と共に岐阜市内線~揖斐線の主力として活躍しましたが、2005年の岐阜地区600V線区の全廃で職を失った本形式は翌年から全車が車番そのまま福井鉄道に活躍の場を移しました。塗装は名鉄時代の塗分けをほぼそのまま生かし白地に青や緑を用いたものに変更、鉄道線である揖斐線で活躍していたこともあり足回りも大きく変更することなく運転を開始しました。えちぜん鉄道との直通運転を開始した2016年には直通運転予備車として整備されましたが、定員の違いに加え高床車であることが問題視され直通非対応だったF1000形を対応させることで直通運用からは1年強で離脱。現在は同社線内のみの運用に戻りましたが急行運用を含め活躍しています。


F77-車内全景

まずは車内全景です。880形に比べスリムな車体幅となり、縦長な車内空間との印象を強く持ちます。一方で880形にあった強烈な個性を発する部品が一般的な形状に改められた箇所もあり、当時の名鉄一般車と極力イメージを共通化したい思惑も見え隠れします。1車体2扉の2両連接車であることは880形と変わりませんが、車体中央寄りの両開扉の位置が変更されており扉間は長く、車端部は短くなっています。福井鉄道譲渡後も内装は大きな変化なく、名鉄時代の姿を色濃く残しています。

F77-運転台仕切

運転台仕切は三面に折って乗降扉のスペースを確保する形状としていた880形の構造を改め、運転室全体に十分な奥行きを取った通常構造に改めました。構成の変化は当初から運賃箱を設けていたことも影響しているでしょうか、880形とは異なり降車時の導線も比較的スムーズです。出入口もパイプ1本だったところ腰の高さの扉を設けています。

F77-運賃表示機sF77-LCD

運賃表示機です。譲渡直後はLED式文字表示と7セグメント式運賃表示の組み合わせでしたが、現在は液晶モニタに交換されています。

F77-車端部

車端部です。880形に続き中国寺院の門のデザインを取り入れた形状を踏襲していますが、その特徴である円形部が880形に比べると小さくなっています。これは恐らく車体幅縮小の影響で、円形でなければ前述「円洞門」では無くなってしまうのですね。もっとも少し調べてみると880形の方が実際の形状に近いようですが…

F77-扉(入口)F77-扉(出口)

扉です。入口となる中央寄り扉は両開きですが、880形が幅1300mmだったのに対し本形式は幅1100mmとスリムになっています。出口となる運転台横の扉は幅750mmの3枚(2枚+1枚)折戸で変わらないものの、880形と異なり扉3枚ともに窓を設けています。

F88-天井F77-天井

天井です。本形式は当初から冷房を装備しており、ラインデリアから直接冷房の冷風を吹き出す構造としています。荷棚が全座席上に設置されたのも大きな変化点です。吊革吊手は880形と同様若竹色の車両と通常の白色の車両があるようですが、手持ち資料では製造時期による差異なのか後年の交換の結果なのか分からず…

F77-車端部渡り板

床は名鉄時代に当時増備中の通勤車と同じ模様に張り替えられており、現在まで変わっていません。円形の渡り板は自在に回るようで、フットラインのある床材を張るとご覧の通り変な方向を向いてしまいます。なお連結面間幅は880形より100mm広くなっています。

F77-窓

窓は冷房車ということもあり大半が固定式、車端部のみ下降窓のようです。カーテンは豊田線用100系と同じ横引き式。

F77-7人がけロングs

座席です。880形ではFRP製の枠に背摺り・座面クッションを1人ずつ取り付けた独自の形状でしたが、本形式は通常構造のロングシートになりました。車体幅縮小の煽りで座席奥行きを縮小せざるを得ず、更に立席スペース確保のためか座席幅も435mmに縮小されています。背摺り・座面とも縫込みを設けたのは当時の名鉄通勤車に倣ったもの、袖仕切は6000系(貫通型)と同様のパイプ式です。

F77-補助座席収納F77-補助座席

扉間の通常座席は短縮しましたが、閑散時の着席定員を確保するため補助座席を設置しています。福鉄移籍後当初は全てを車椅子スペースとして閉じていたようですが、現在は基本的に展開されているようです。名鉄時代の新車記事によると「ラッシュ時は補助座席をロックし」との一文がありますが、一斉ロックの機能は無さそうですから名鉄時代は1か所ずつロックしていたのでしょうか。大変そう…

F77-4人掛け優先

車端部は4人掛け、扉寄り2席は優先席のため背摺りを青系モケットとしています。

前述の通り寸法面では880形に比べ厳しいものとなっていますが、880形は美濃町線、770形は岐阜市内線・揖斐線でそれぞれ活躍していた頃はともかく、現在の福井鉄道では両形式が同じ線区を走りますから掛け心地を比較されてしまうのが悲しいところでしょうか。正直なところ掛け心地はあの見た目に反し880形の方が良いように思います。


F77-運転台

運転台です。これも当初からワンマン運転に対応していたためでしょうか、計器類のみならずワンマン機器等も統一した三面のパネルに設けています。

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