阪神9300系
1998年に新設された阪神梅田~山陽姫路間の「直通特急」は乗客に好評をもって迎えられ、2001年のダイヤ改正では本数を倍増することとなりました。折しも老朽化した車両を取り替える時期でもあり、直近に製造した急行車は震災復興のために急造した9000系だったこともあり、新形式9300系が登場しました。
車体は普通鋼製に戻り、8000系や5500系をベースに前面はスピード感を持たせた斜めカットを採用。塗装は従来の赤胴車のイメージから一変、橙と白系のツートンとなりました。考え方としては5500系に倣ったものではありますが、甲子園に向かう阪神ファンから物を投げられそうな色です。足回りは制御装置に阪神初のIGBT素子を用いたVVVFインバーターを採用しています。そして阪神にとっては「直通特急」運転開始後初の新形式ということで、山陽車や競合するJRとの兼ね合いもあってか車内設備も見直されています。
老朽化した3000系3編成を置き換えただけで増備は終了、以後の急行車の増備は近鉄直通にも対応した1000系に移行しています。現在は8000系と共に直通特急をはじめとした梅田発着の優等各種別に充当されています。
車内全景です。先頭車は主要駅の改札位置や混雑度合いとの兼ね合いもあって従来車並みのオールロングシートですが、中間車には阪神電車では37年ぶりにクロスシートを設けました。クロスシート車の座席配置に関しては、直通特急に使用される山陽5000系よりも神戸高速線で顔を合わせる阪急8000系に近いものがあります。
車端部です。基本的には今まで通りの構成ですが、通路幅が僅かに広がっているようです。写真の箇所は左側に中間運転台と思しき機器箱が設けられています。
乗務員室仕切は従来車並みですが、乗務員室内の遮光幕は本形式から自動式になりました。
阪神電車の扉は伝統的に少し幅広の1400mmでしたが、クロスシート設置で扉間寸法を稼ぐ必要があったため一般的な1300mmとされました。クロスシート部であっても立席スペースを一応確保しています。なお扉の幅はオールロングシートに戻った以後の新形式も1300mmとされています。
扉上にはLED式の情報案内装置を設置。マップ式の停車駅案内装置は山陽区間の直通特急停車駅も描かれていましたが、直通特急の停車駅増加もあってか撤去されたとの由。実はこの写真でも路線図上にある停車駅のランプが光っているのですが、まあ見えませんよね… 液晶式の情報案内装置が普及した現在、完全に過去の物と化してしまいましたし、そもそも多くの種別がある路線・車両で使うこと自体に無理があるような気はします。
天井は5500系・9000系に準じた見付です。写真はロングシート車の物ですが、クロスシート車については当初扉間のクロスシート部分に吊革は設置していなかったようですが、混雑に耐え切れなかったようで現在は扉付近と同じ高さに吊革が設置されています。
床は灰色系、中央にはフットラインも兼ねたブロック模様がプリントされています。
扉間3枚・車端2枚の窓配置は8000系後期車から引き継いでいますが、クロスシートの設置に応じて扉間の中窓は幅を拡大しています。他の窓は既存車と同サイズで、扉間の扉寄り窓は下降式で開閉可能。カーテンは巻き上げ式でストッパーは2か所です。
座席を見ていきましょう、まずは中間車扉間に設置されたクロスシートから。扉横は固定式、中2列が転換式の配置は阪急8000系のクロスシート車と同様で、座席定員と扉横の立席スペースの双方を確保したレイアウトです。座席そのものは山陽車の重厚な見た目・造りではなく、薄め・軽めな印象を受けます。決して余裕のある車体幅ではありませんが、薄いながら窓側にも肘掛を設置しています。シートピッチは910mmと一般的な数値。モケットはジャガード織りで、以後8000系リニューアル車にも採用されています。
通路側肘掛が他では見られない形状で、モケットを巻いている点が特徴でした。ええ過去形なんですね、現在は肘掛自体を交換したようで117系に近い形状に変更されています。何かあったのでしょうか…
扉横の固定座席です。頭の部分が若干前に反り気味ではありますが、転換座席に比べると自然な形状をしています。扉側は立客に配慮しモケットを貼っています。なお枕カバーは当初灰色で上部に被せるような形状でしたが、いつの間にか1席ずつ分かれたものに取り換えられています。
先頭車の扉間は8人掛けロングシート。5500系・9000系と同様の形状で、1人あたり幅は470mmと結構広め。
車端部は5人掛けロングシート。優先席は灰色モケットで区別しています。
乗務員室直後と車椅子スペース横は3人掛け。左の写真は暗くなってしまいましたがモケットの色は他と同一です。
車椅子スペースは線路方向への握り棒1本のみとシンプルな構成。座席の袖仕切は枕木方向のパイプが通常より低い位置に設けられています。
運転台は5500系などをベースにしたデスク式ツーハンドル型ではありますが、ブレーキハンドルも横軸式になりました。
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