JR東海 315系

写真: C5

JR東海は既に国鉄形車両をほぼ一掃していますが、製造後35年程度が経過した211系・213系・311系など界磁添加励磁制御を用いた各形式はそろそろ手を打つ必要が出ていました。313系もデビューから20年が経過していることから、新技術を盛り込んだ新形式として2022年にデビューしたのが今回ご紹介する315系です。
車体はビードの無い軽量ステンレス製、前面は311系以降標準的だったパノラミックウインドウを止めたため平面的で大人しい印象です。主要機器は制御装置にSiC素子を用いたVVVFインバーターを採用したほか、台車は溶接箇所を極力減少させ安全性を向上させています。また2022年度以降製造される車両には非常走行用の蓄電池を搭載する予定です。

2022年春に中央西線に7編成が登場、同社の在来線新造車では初となる8両固定編成を組み、2~4連の車両を適宜組み合わせて運用する複雑な車両運用を一気に単純化しました。この8連を23編成新造するほか、4連も42編成新造し最終的には352両の勢力になる見込みです。


315-車内全景

まずは車内全景から。寒色系の色調は313系譲りながら、鮮やかな青のモケットをはじめ白に近くなった化粧板などの影響か全体的にはっきり・くっきりした色遣いとなっています。

315-車端部1315-車端部2

車端部です。妻面は機器箱を設けたため313系に比べて厚みが増し、消火器はその奥行きを生かし窪みを設けて設置しています。通路脇の握り棒は従来車には無かったものです。各車下り方に設定された優先席は、座席モケットのみならず吊革や床も色を変え区別しています。

315-車端部3

下り先頭車にはトイレを設置、ここだけ見ると313系3次車以降とほとんど変わっていません。消火器カバーが廃された点が数少ない変更点でしょうか、コストカットだけでなく313系製造後に色々あった同社ですから非常時にワンテンポでも動作を減らす意味合いもありそうです。

315-トイレ1315-トイレ2

前述の通り概ね313系3次車以降を踏襲しているトイレですが、ベビーベッドは位置が変更されたほか、便座消毒用クリーナーは濡れた状態のペーパーを用意するのではなく単独で消毒液を用意するよう変わっています。

251-車いすスペース

反対側には車椅子スペースを用意、パネルヒーターも設置されています。ここは0番代と全く同じです。

315-乗務員室仕切

乗務員室仕切です。仕切戸だけが一段奥まった位置にある構成は313系と同様ながら、仕切窓の少なさ・小ささには驚いてしまいます。特に車掌台側に窓が全くありませんが、こちら側は機器室を設けているようです。仕切戸は開戸で、313系と同様に運転台側に閉じて通路を構成することも可能です。

315-扉

扉です。同社最新の一般形車両であるキハ25形2次車では内張りを省略していましたが、どうやら単なる地方線区向け車両のコスト削減だったようで本形式は周囲と同様白の化粧板仕上げとしました。313系やキハ25形のロングシート車と比べると扉と座席の間のスペースが減っていますが、これは座席が313系に比べ増えているため。加えて車端部に機器箱を設けた影響もあるのか、扉間・車端部を問わず扉脇の寸法が同一になっているようです。

315-LCD

情報案内装置は液晶式を採用、全扉上に設置しています。

315-天井

天井は一般的な構成、LED照明は313系5次車・キハ25形2次車から採用されており後者は本形式と同様にカバーがありませんでした。枕木方向の吊革は211系5000番代以来久々の登場、色は313系同様に灰色です。なお冷房制御にはAIによる自動学習・制御最適化機能を国内で初めて導入、撮影はデビュー直後の3月~5月でしたから今後に注目です。

315-床

床は313系のグレー系から一転、座席モケットに合わせた青系となりました。通路部には三角形を組み合わせた図柄にてフットラインを形成しています。

315-窓315-窓2

窓は扉間3枚・車端1枚の構成、車端部と扉間中央の窓は二段に分かれており313系の車端部と同様に上部が内折れ式で開閉可能です。緑色の熱線吸収ガラスを採用した代わりにカーテンレスとしたのは同社初、名古屋地区では既に名鉄の新車で一般的になっています。
なお形式図を見る限りこの窓割はロングシートありきで決められているようで、自由度を持たせていた313系とは訳が違うようです。

315-11人掛け315-11人掛け優先

座席を見て行きましょう、扉間は211系5000番代と同様の11人掛けです。JR東日本でお馴染みの形状の座席がJR東海では初登場、名古屋近郊では名鉄瀬戸線の4000系や地下鉄桜通線6050形でも採用されています。1人当たり幅は460mmですが、211系5000番代は450mmでしたので製造時期の割には同車も近年の電車と遜色なかったことが分かります。

なお本形式の扉間は313系より50mm長く、その為に全長が中間車であっても20100mmと微妙な数字となっています。個人的には着席定員の増加と車体構造上どうしようもない部分(扉両脇の柱)のせめぎ合いの結果なのでは…と思っていますが実際のところはどうなのでしょうか。

315-4人掛け315-4人掛け優先

車端部は313系同様の4人掛け。優先席はオレンジ系のモケットで、座席間のスタンションポールも追加されています。313系では妻面寄りに申し訳程度の肩逃し(肘掛)がありましたが、あっても無くても変わらないレベルの物だったせいか本形式ではあっさり省略されています。一方で313系では妻面座席上の隅部に設けていた消火器が足元に変更されましたので、一番奥に座る乗客にとってはプラスマイナス0どころか良くなっているかもしれません。

短距離しか乗車できていないこと、また東日本各形式でもここまで新品の車両に当方乗車したことが無いため細かい評価は出来ませんが、座面の詰め物が近年の東日本各形式に比べてもしっかりしている印象は受けました。

315-車椅子スペース2315-車椅子スペース1

車椅子スペースはこれまで編成に1か所の割合で設けていましたが、本形式は313系の下り先頭車トイレ横に加え各車上り方(東京・松本方)には車椅子スペースを設置しています。

315-車椅子スペース3315-8人掛け

上り先頭車では乗務員室直後の扉間11人掛けを8人掛けに短縮して車椅子スペースを設けました。面積は車端部に比べ余裕が無い印象、すぐ横の袖仕切は窓と干渉するため背が低く肘掛けとしても使えそうな形状です。

315-運転台

運転台です。左手ワンハンドルの配置は313系譲りながら、グラスコックピットを採用し速度計や圧力計などを左の画面にまとめています。


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