JR東海373系|FTN trainseat.net

JR東海 373系

写真: F3

国鉄の急行は分割民営化の前に特急化された例が数多くありますが、東海道線(東京~静岡間)急行「東海」と身延線急行「富士川」は1990年代になっても165系で運転されていました。難しいのは間合いの普通運用なども受け持っていたことで、この場合特急型と近郊型の両方を持つとなると車両数が増加してしまう場合があります。結局コンセプトとしては185系同様「特急でも普通でも使える車両」となってしまい、1995年に登場したのが373系です。
位置づけとしては特急型、車体は先頭部を除きステンレス製で前面は白塗り、窓回りに濃色のフィルムを貼ったのはキハ85系や383系と同様です。一方で2か所の両開き扉、それも側面見付としては117系や私鉄のクロスシート車にありがちな配置と言う辺りが気になります。編成は「富士川」で使用されていた165系と同じく3両編成、主要機器は量産先行車が登場していた383系と共通品を多く使用しています。

14編成が製造され、急行だった列車は特急化され身延線は「ワイドビューふじかわ」東海道線は「ワイドビュー東海」となりました。加えて飯田線には特急「ワイドビュー伊那路」を新設、「大垣夜行」は快速化され「ムーンライトながら」となるなど新たな展開も見られました。また「ホームライナー」や普通列車など、活躍の幅で言えば165系以上かもしれません。しかし「ワイドビュー東海」は2007年で消滅、2009年には「ムーンライトながら」臨時化に伴い本形式での運行は終了、何故か残っていた普通列車での東京乗り入れも2012年で終了しており、現在は「ワイドビューふじかわ」「ワイドビュー伊那路」「ホームライナー」が運用の中心です。近年は「飯田線秘境駅号」「中山道トレイン」のような観光列車然とした運用も急行として運転されます。


■客室■

373-車内全景

まずは車内全景から。JR東海の電車では珍しく暖色系が主体の色調、置き換え前がボックスシートの165系だったことを考えると結構なグレードアップと言えると思います。ただ奥をよく見ると仕切があって、そこから距離があって扉が見えますね…

373-車端部

特急形電車ですが車端部です。皆様ご存じの通り驚くべきことに本形式にはデッキが無く、この手前には同じような仕切があり、写真の位置には側扉があって、更に奥にセミコンパートメントと称する座席がある格好。急行型の準じた車両ということであれば扉を端に寄せる構成でも良かったはずですが、その場合両開き扉を使おうとするとどうしてもデッドスペースが生じてしまいますのでその辺りの兼ね合いでしょう…

373-LED373-LED2s

情報案内装置は扉間の仕切上に設置、号車や座席区分も含めてLED式です。フリーパターン表示機は列車や次駅案内が中心。車端部に何もないのは不都合なのか、車端部には号車と座席区分だけ表示する装置も設けられています。

373-天井

天井はJR東海の特急形標準とも言える照明カバーを広く取った構成です。

373-床

床は通路を灰色の柄入り、座席部は茶系としています。

373-窓

窓は2席で1枚が基本ながら、車体長との関係か車体中央に1席1枚の窓を設けているのが特徴。カーテンは灰色の横引き式、荷棚は「南紀」用キハ85に似た形状です。

373-座席373-座席展開

座席を見て行きましょう、まずは扉間のリクライニングシートから。シートピッチこそJR東海標準より幾分狭い970mmですが、座席形状やリクライニング角度は既存の同社特急型と大きく変わるわけではありません。ただ座面・肘掛とも他形式に比べ角度が無く、そのうえ座席表地が妙に滑るのが気になります。肩部の取っ手は383系と同型、近年のキノコ型ならともかく実用的な形状は間合い運用時に通路まで立客が入ることも想定してのことでしょうか…?

テーブルはJR東海の特急形では珍しくインアーム式を採用、ただメンテナンスが追い付かないのか水平を保てていないものも見受けられます。また中央肘掛は素材が悪いのか劣化が見られ、写真のように矢鱈と下がってしまうものも珍しくなく… 「従来の急行型よりは良い」という程度の、立ち位置も造りも使われ方も微妙な感じになってしまっているように思えてなりません。

373-座席背面

座席背面には網ポケットと跳上式フットレストを設置、インアームテーブルがありますので背面テーブルは省略されています。ポケットはどうも伸び気味、フットレストも写真では下げた状態で固定出来ていますが出来ないものも見受けられます。

373-ボックス

車端部は「セミコンパートメント」とされていますが、実態としては豪華なボックスシートです。ボックスピッチは2m近くある模様、テーブルがありますのでグループ利用には好適です。ただリクライニング機構は無く、何より車端部ですから揺れる場合もあり…

373-座席(1人掛け)373-座席(1人掛け)展開

1号車には車椅子対応の1人掛け席を設置。

373-枕カバー

ところで本形式、ここまでご覧いただいたように基本的には枕カバーを付けて運用されていますが、それを捲ると頭部のみレザー仕上げとして枕カバー無しでの使用も可能としています。「ムーンライトながら」運用時の写真を見ると枕カバーは無かったようで、当初から特急以外の役割を与えられていたことを示す設計です。


■扉付近・その他設備■

373-扉

扉は幅1300mmの両開き式、窓形状が特徴的です。仕切には半自動扉ボタンを設置していますが、現在使用機会はあるのでしょうか。

373-車端部2

1号車には便洗面所を設置。過去には壁に公衆電話も設けていました。

373-トイレ373-洗面所

便所は車椅子対応の洋式便所と男子小用を用意。また独立した洗面所も設置しています。

373-乗務員室仕切373-運転台

乗務員室は仕切窓に曲面ガラスを用いた点が特徴で、流石に窓回りは変更されたものの構成自体は後の313系に通じるものがあります。運転台は左手ワンハンドル式。


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