209系2100番台|FTN trainseat.net

JR東日本 209系2100番台

写真: マリC601

1993年に登場した209系は従来の車両設計を大きく転換、同社では以後の新形式が「新系列車両」と区分されています。設計にあたり「重量半分・価格半分・寿命半分」が目標として掲げられ、重量は確かにずいぶん軽く、価格もメーカーによる設計の差異を容認したため安くなったようです。そして寿命も半分くらいに達した2010年までに当初投入された京浜東北線から撤退したのですが、多くが改造を受けて房総各線で活躍していた113系の置き換えに充当されました。
転用にあたっては寿命を迎えつつあった制御装置などの更新に加え、近郊型を置き換える形になるため一部車両にボックスシートやトイレを設置する改造を行いました。帯色は京浜東北線時代の青色から千葉地区の211系に採用されていた黄色と青の組み合わせに変更しましたが、その211系も本形式で置き換えています。

現在は千葉を拠点にした県内各線のローカル列車に、4連42編成・6連26編成が充当されています。


20921-車内全景(ロング)20921-車内全景(ボックス)

車内全景です。左は京浜東北線時代の姿を残す、というかそのままの中間車、右は転用改造で新たに設置されたボックスシートを備えた先頭車です。全体的に少し暗いような印象ですが、特に前者はどことなく草臥れた感があります。いずれも4扉で前者はオールロングシート、後者はE217系以降のクロスシート車同様、扉間の片側にボックスシート1つと2人掛けロングシート×2を配した構成です。

20921-車端部120921-車端部2

車端部です。従来車では当たり前のように設置されていた貫通扉を、209系では関東私鉄に倣ったのか最低限の数まで減らした点が特徴です。

20921-車端部4

一部車両では転用改造にあたり貫通扉を増設しています。既存の貫通扉に比べ化粧板が貼られ、窓も大きくなっていますが、これはE233系と同一品のようです。
貫通扉のそれと比べて分かるという程度の話ではありますが、化粧板は微妙に灰色がかっているようです。これが車内全体が暗く見える原因の一つなのかもしれません。

20921-車端部320921-トイレ

転用に際して行われた大きな改造の1つがトイレの設置です。当初は先頭車への設置が検討されていたようですが、どういう訳か中間車への設置に変更されています。形状は車椅子に対応した大型タイプ、内部は洋式で近年の他形式並み。消火器の張り出しが若干気になるところではありますが…

20921-乗務員室仕切

乗務員室仕切です。運転台直後の窓は非常救出口を設けたため廃止されましたが、残る2枚の窓は天地寸法が拡大されています。このサイズなら子供でも何とか自分で前面展望が可能な大きさでしょうか。

20921-扉(ロング)20921-扉(ボックス)

扉は銀色無塗装、鴨居部にはLED式の情報案内装置を設置しています。左はロングシート車、右はボックスシート設置車ですが、後者は袖仕切が扉ギリギリまで迫ってきています。

20921-LED

情報案内装置は一段のLED式で、この辺りは従来通りのようです。

20921-天井

天井です。ラインデリアは所々に設置されていますが、周囲のパネルは枕木方向に細い線の入ったFRP製。吊革は三角形で、優先席部はE233系と同様の形状をした黄色いものに取り換えられています。

20921-床

床は灰色一色ですが、ロングシート車はご覧のように色が変わってしまっています。クロスシート車は座席の改造を行ったので床を貼り替えているようですが色は同様に灰色、せっかくならE233系のようなベージュでも良かったのではないかと思わないでもありませんが、よく考えたら編成中で床の色が違うというのも変な話ですね…

20921-窓

209系の大きな特徴の一つに、扉間の窓を全て固定式にした点が挙げられます。間柱もない大きな1枚窓で、ロングシートでは中々実感できませんがその眺望の広がりは中々なものです。一方でカーテンを廃し色付きの窓を用いたため、綺麗な色の車窓とは行かないのが残念なところ。カーテンはあった方がいいと思うのですが…

20921-窓2

しかし2005年に電車が立ち往生した際、窓を開けての換気が難しい構造が仇となり多くの乗客が体調不良を訴える事態が発生したそうです。そこで同年末から1両に6箇所ある大窓のうち4箇所をE231系同様に左右を不等2分割、大きい側は上下にも2分割して上段下降式とする改造を実施しました。京浜東北線所属車への施工は車両基地では無く下十条運転区で行われ、1年半足らずのうちに78編成の改造を終わらせたとのこと。縦柱の位置を見ると、カーテンが無かったが故の早業かもしれません。

20921-窓3

房総各線への転用は窓改造の後ですので、ボックスシート部は窓割が合わない残念な状態に。一方で大窓のままの箇所もありますので、そちらは当たり席と言えそうです。

20921-7人掛け20921-7人掛け優先

ここからは座席をご覧いただきますが、まずは京浜東北線時代の車内をそのまま残す中間車から。扉間は7人掛けで、モケットの張り替えも行っていません。大きな板状の袖仕切や座席間のスタンションポールは本形式が初登場で、時間を掛け全国各地に広まっていきました。座席そのものも輸入品でバネを用いずウレタン製とし、バケット形状が強いものとなっています。座席幅は従来の430mm程度から450mmまで拡大しています。一部箇所は7人掛けの内5人分を優先席に設定していますが、青系の通常モケットと横並びになると何とも言えぬ違和感があります。

20921-3人掛け20921-3人掛け優先

車端部はトイレを設置した箇所を除くすべてが従来通りの3人掛け。一部車両では車端部に僅かながら窪みを設けていたようですが、僅かな時間では残っている車両を見ることは出来ませんでした。なお車端部の窓は当初より開閉可能です。

20921-車椅子スペース

一部の車端部には車椅子スペースを設置しています。設備としては握り棒1本に非常通報装置のみと些か寂しいものではありますが、後者は転用改造の際に通話式に改良されています。窓下に見える四角いものは恐らくパネルヒーターでしょう。

20921-ボックスシート

続いて先頭車の扉間に設置されたボックスシートです。座席形状は同時期のE233系ではなくE231系に近く、従来通りの背摺りはもちろん座面も同系に近いかなり硬めの仕上がりで、何とも残念な感じ。改造車ゆえ片持ち式とすることが出来なかったようで、通路側にも脚があります。モケットは独自の緑系、ボックスピッチは同様の配置をしている他形式と同様、概ね1500mm前後と思われます。

20921-ボックステーブル

ボックスシートの窓側には小さなテーブルが設置されています。形状はE721系と同様、飲み物の容器大の窪みが2つあるものです。首都圏のE231系やE233系に無いのは何となく分かりますが、仙台のE721系や千葉の209系には有り新潟のE129系には無い、設置基準が今一つ分からない設備です。もっとも本形式の場合は改造車ゆえ窓框の張り出しが無く、それを補う意味があるのかもしれませんが…

20921-2人掛け20921-2人掛け優先

ボックスシートの両側には2人掛けロングシートを設置しています。実物を見る前は7人掛けの両側をそのまま残して間にボックスシートを作ったのかと思っていましたが、前述の通りそういう訳では無いようです。全車共通の優先席はともかく通常席のモケットはクロスシートと同様の緑系に張り替えられていますが、元からのロングシート部と大差ない座り心地であることを鑑みると、或いは流用品を張り替えただけの可能性も捨てきれません。



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