485系「リゾートエクスプレスゆう」|FTN trainseat.net

JR東日本485系「リゾートエクスプレスゆう」

写真: カツK30

JR東日本水戸支社で保有していたお座敷客車「ふれあい」はスロ62形改造の旧型客車ということで陳腐化が進んでいたため、1991年にそれを置き換える新たなジョイフルトレインとして「リゾートエクスプレスゆう」が登場しました。首都圏エリアのジョイフルトレインはJR化後初登場とあって力が入っており、車内は若年層をターゲットに座席車としました。前照灯やヘッドマークの入り方、それと真ん中あたりに挟まっている車両からジョイフルトレインの雰囲気が伝わってきますが、そうでなければ特急形としてこういう車両があっても不思議ではないかなあ、という外観ではあります。
一応485系ではありますが車体は新造、名義上の種車はあるのですが全て余剰のサロで大半が183・189系となると頭にクエスチョンマークがたくさん… 実際に種車から流用した機器は制動装置とMG・CP程度で、主要機器は別の485系の廃車発生品から持ってきたようです。またマニ50を改造し同色に塗った電源車(いわゆる「ゆうマニ」)を用意し非電化区間への乗り入れも考慮していました。

座席車として登場した「ゆう」ですが、乗客の要望に合わなくなったようで1998年にはお座敷車に大改造。運用範囲は常磐線を中心にJR東日本の電化区間、更には前述の電源車も活用し非電化区間へも乗り入れましたが、需要減と足回り機器老朽化の為か2018年秋に廃車されました。本項では2018年2月に撮影した、まさに最晩年の車内の様子をご覧いただきます。

※写真は中央大学鉄道研究会様の貸切列車『「リゾートエクスプレスゆう」で行く仙台の旅』にて撮影したものです。関係者の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。なお当日の様子はブログにて紹介しています(前編/後編)


【お座敷車】

カツK30-車内全景

まずは車内全景から。グリーン車扱いですから相応に金を掛けたのでしょうが、座席車からの改造とは思えない自然で落ち着いた仕上がりとなっています。あ、右上に誰かの携帯電話が写り込んでしまったようです…

カツK30-車端部カツK30-車端部2

車端部です。左は乗降扉側で、向かって左には大きな下駄箱、反対側には飲食店にありそうな大きめの冷蔵庫が設けられています。右は車端側で、中央に画面やポットなどを収めた独立した棚を設置しています。

カツK30-カラオケ180203-カラオケ

カラオケ機器は乗降扉側に設置。通信カラオケの「LIVE DAM」を設置しており、カラオケボックスにしては随分大きいですがそれと変わらぬ感覚で楽しめます。モニタはブラウン管から液晶に交換されていますが、縦横比が変わって幾分小さい画面になってしまったようです(ブラウン管テレビはこの黒枠と同じくらいのサイズだった模様)。若い層での貸切列車にも拘らず写真は「スーダラ節」、「岬めぐり」を歌った我々含めて若さが感じられません。

カツK30-展望室カツK30-展望室2

先頭部は窓を大きくし前面展望も考慮したフリースペースとしています。雰囲気から何となく察せられるかもしれませんが、この区画は座席車時代から特段手を加えていないようです。

カツK30-展望室座席

座席はソファタイプ、足元に照明を仕込んでいる点が特徴です。

カツK30-窓

窓は座席車当時のシートピッチ(1250mm)に合わせ2列分で1枚、カーテンは横引き式です。元々荷棚はハットラック式だったようですが、お座敷化で撤去されています。

カツK30-暖房

鉄道車両の暖房というのは座席下に設けるのが定番ですが、この電車はお座敷車ですからそれが通用しません。1つ前、窓の写真をご覧いただくと腰板の部分に四角いものが見えますが、実はこれが暖房の吹き出し口になります。下の方に小さく「高温注意」とありますが、強めにすると結構な熱さになるため注意が必要です。

カツK30-天井

天井は中央にいわゆる光天井を設けたスタイル、そこまで気になりませんが「らしくない」感もある円形の装飾は座席車時代からそのまま引き継いだものです。写真は黒磯のデッドセクションを通過している際の一コマ、デッドセクションで照明が落ちる電車もすっかり数を減らしました。

カツK30-お座敷席カツK30-お座敷席2

座席です。当サイトでこういった車両の紹介は初めて、どう紹介すれば良いか悩んでしまいます(汗 お座敷席は1テーブル4人、座席車時代に比べ1人当たりのスペースは減っている一方定員も減っているようです。大の大人4人で囲むと幾分狭いかな?という印象ではありましたが、編成丸ごと貸切でワイワイガヤガヤやるとなると座席より座敷の方が融通が利くような気もします。「華」などとは異なり掘りごたつ式ではありませんが、これは出自が座席車で床面高さや屋根高さなどの制約があるためと言います。

カツK30D-座席番号

窓上には座席番号ステッカーを貼っています。

カツK30-座椅子

座椅子は「華」と同等品のようです。


【イベントカー】

写真: カツK30=サロ485-1

窓が極端に少なくあったかと思えば高い位置という異様な雰囲気を醸すのは4号車(サロ485-1)の「イベントカー」。ディスコ調の内装というのが実に時代を感じますが、お座敷化後もここまで尖った内外装ではどうしようもなかったのかそのままの姿を留める格好になりました。

カツK30D-ディスコ全景カツK30D-ディスコ全景2

車内全景からご覧いただきましょう。東京方半分はイベントフロア、中央のカウンターを境に青森方半分をドーム室とした構成です。高い天井に濃灰色の壁、派手な床の柄など、先ほどまでと同じ電車とは思えないベクトルの違いに思わず絶句してしまいます。

カツK30D-ディスコ端部

乗降扉寄りの端部です。右の小部屋はDJブースで、内部を見ることは叶いませんでしたが本格的なAVコントロール機器を搭載しているようです。イベントルームとデッキ部では車体断面が異なっており、境目となるこの部分には天窓を設けて採光を確保。

カツK30D-ディスコ窓

採光は天窓とドーム部から、という考えなのか平屋部の窓は写真のような縦長のものが少数あるだけ。

カツK30D-ディスコ天井

天井は中央に灯具を設置。撮影が廃車半年前と最末期ということもあってのことなのか、レール方向に設けられていた赤青緑の派手な照明は既に全撤去されていました(派手に光っている写真はWikipediaにあるようなので各自ご覧ください)。

本格的な設備を誇るイベントスペースですが、床下にはCPが設けられています。歌って踊ってという場面がどれだけあったのか分かりませんが、音楽に合わせてCPがドコドコドコと鳴る訳で…

カツK30D-補助座席

イベントスペースには跳上げ座席を計10席用意、1席毎に任意で展開・収納することができます。これだけの厚みですから当然と言えば当然かもしれませんが座面は底突き感や薄さなどを一切感じない仕上がり、着座時頭部が来る部分にはゴムを当てるなどかなりしっかりした造りという印象でした。

カツK30D-バーカウンターカツK30D-ドーム部

車体中央部のカウンターは冷蔵庫・電子レンジ・流し台など一通りの設備が揃っていますが、流し台の水は飲用禁止とされているようです。

カツK30D-ドーム全景

ドーム室は2階建て車の2階部分に相当する高さ、座席は10脚設けられていますがこれも定員外の扱いです。

カツK30D-ドーム窓カツK30D-架線検測

窓は車体の曲面に沿う格好、シートピッチに合わせた配置です。端部の窓からは架線や隣の車両(の反対側の車端)に搭載されたパンタグラフの様子を見ることも出来ます…ってそういう物では無い?

カツK30D-座席カツK30D-座席展開

座席は床から更に1段高い場所に設置されています。寸法はグリーン車の1人掛け並み、肘掛に至っては平屋部が座席だった時代の座席と同じ物のように見えますが、背摺りは肩部を削ぎ落した独自の形状で頭部には枕カバーを被せています。テーブルは壁に設けられた折り畳み式の物を使用。

カツK30D-座席窓向き

暗い写真になってしまいましたが、座席は窓向きに固定することも可能です。向きの変更は肘掛レバーで行います。

カツK30D-夜間

このドーム部の照明は座席と床面の段差に照明を仕込んでおり、暗くなると写真のように独特な車内空間を創出します。当時の鉄道雑誌には「夜空を眺めながらムードのある旅を…」とありますが、成程この構成ならガラスへの映り込みが無い訳ですね。

カツK30D-通路

ドーム部分の脇にはイベントスペースと同一平面で隣車への通路が設けられていますが、窓が無く壁は濃灰色と元々狭い幅に加えてかなり圧迫感があります。

カツK30D-電話跡

通路の突き当りにはかつてカード式公衆電話を設けていましたが、晩年は例によって撤去されていました。


【デッキ・付帯設備】

カツK30-扉

扉は各車1か所で幅850mm、暗めのデッキに車体帯にも用いられるペパーミントグリーンの取っ手が映えます。

カツK30-トイレ1カツK30-トイレ2

便洗面所は1・4・6号車設置。トイレは洋式と男子小用を設けていますが、前者は写真右側にトイレ内にしてはしっかりした手洗いが設けられており、エアータオルまで設けられています。

カツK30-洗面所

独立した洗面所も設置、自動式でお湯を出すことも出来ます。

カツK30-リネン室カツK30-多目的室

3号車東京方車端には業務用室と多目的室を設置。前者には予備座布団やスリッパを詰め込んであるようです。

カツK30-運転台

運転台です。何しろ新造車体ですから、少なくとも客室内で485系を目で見て感じることが出来る部分はほぼ皆無なのですが、ここの機器配置は同系に準じています。前面視界は良好かと思いきや中央に入った太い柱(ヘッドマーク)が邪魔ですね…


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