JR東日本 E217系(普通車)
通勤型209系に続く「新系列車両」として登場したのは横須賀線・総武快速線向けの近郊型E217系です。伝統のスカ色を帯色に残した新車は従来の113系と同様基本11連と付属4連の組み合わせ、基本編成にはグリーン車を2両組み込みます。前面はスピード感を与える流線形ながら東京付近の地下トンネルに対応して非常口を設けました(増備途上でデザインそのままに省略)。しかし最大の特徴は近郊型ながら4扉とした点、ロングシート車も設定していよいよ通勤型と近郊型の区分が曖昧になってきた感があります。2007年から足回りの更新を行い引き続き活躍を続けていましたが、2019年にE235系への置き換えが発表されているので今後の動きには要注目です。
1999年までに基本51編成・付属46編成が製造され、横須賀線・総武線快速を軸に千葉県内各線へも足を延ばします。
なおグリーン車は別ページでご紹介していますので、併せてご覧ください。
まずは車内全景から。左のロングシート車が編成の大半を占めていますが、裾絞りがあることを除けば209系と何ら変わりない印象です。一方4扉車でセミクロスシートと言うと近鉄2600・2610系(21m級)や相鉄8000系など先行事例は限られますが、床面積をある程度確保できる後者のレイアウトをそのまま取り入れています。配色はいずれも灰色と青の寒色系、なんとなくドライな印象ではあります。
編成内での比率としては圧倒的にロングシート車が多く、セミクロスシート車は基本編成の千葉方3両のみの設置です。後継車となるE235系はオールロングシートになりますが、東京付近を一つの境として見ると他の近郊型運用路線に比べれば千葉も久里浜も近距離ということなのか、或いは駅設置後利用者増が著しい武蔵小杉の問題もあるのか…
思いのほかバリエーションが多いのが車端部。貫通扉は209系同様基本的には省略されており、あっても片側だけの設置です。写真では消火器が飛び出る形で設けられていますが、製造会社による相違か妻面の窪ませた部分に収めた車両もあるようです。
厄介なのがトイレの付く先頭車。車椅子対応とそうでないもの(和式)の2種類がありますが、「現在は」全編成とも基本編成の久里浜方先頭車に車椅子対応トイレを設けています。では登場時は…というと車椅子対応トイレの登場が1997年度登場の4次車からで、その際全編成で設備を統一すべく先頭車を差し替えたとの由。
不思議なのは従来のトイレと車椅子対応トイレで設置位置が異なること。従来のトイレの設置位置は向かって左側で113系などと同様なのに対し、車椅子対応トイレは反対側になって以後JR東日本の標準となった感があります。
前述の通りトイレは2種類ありますが、写真は和式トイレ。考え方としては従来の近郊型電車のそれと大きく変わってはいません。内部の写真や車椅子対応トイレは撮り損ねたようで、また撮影機会があれば追加しますがその前に廃車されるかも…
乗務員室仕切です。成田線での痛ましい事故を踏まえ乗務員室やその直後を大きく取っていることが特徴で、20m級4扉車ながら乗務員室直後に立席スペースがあります。前面中央に非常口を設けているため仕切戸も中央にありますが、209系もそれ以降の形式も車掌台側にオフセットしているので何となく違和感が無いではありません。
扉は銀色無塗装、鴨居部にはLED式の情報案内装置を設置しています。左はロングシート車、右はボックスシート設置車ですが、後者は袖仕切が扉ギリギリまで迫ってきています。
情報案内装置はLED式を扉上に設けています。文字サイズは決して小さくありませんが、全角5文字半しか入らないというのはかなり少ないですよね…
天井です。写真には写っていませんが所々にラインデリアを設置、周囲のパネルは枕木方向に細い線の入ったFRP製としています。三角形の吊革は従来国鉄形では設置していなかったボックスシート部にも設けています。
床は灰色一色。
窓は大きな開口部をボックスシートの位置に合わせて3分割し、中央の大窓を開閉可能としています。当初は全車同じ窓割としていましたが、ロングシート車は増備も終わりに差し掛かった頃に登場した209系500番台に合わせて不等2分割の構成に変更しています。トイレにせよ窓割にせよ、E231系以降標準になった構成が確立されていく途上の電車ということになりましょうか。209系同様熱線吸収ガラス採用と引き換えにカーテンはありません。
ここからは座席をご覧いただきますが、まずはロングシート車から。扉間は209系と同様7人掛け、ここだけ見ると「近郊型」の括りはどうなんだろう、という気もしてきます。1人当たり幅は450mmで2-3-2と区切るスタンションポール、それに背摺りの形状・座面の硬さともに何ともならない点なども含め209系同様です。背摺りと座面で異なる濃淡青系のモケットも209系を基本としたものですが、背摺りの斜めストライプは本形式固有の柄です。
優先席は基本的に車端部に配されますが、座席配置の都合から扉間に一部を配した区画もあります。左はトイレ付先頭車にある5人分を優先席としたもの、右は付属編成千葉方先頭車にある2人分だけ優先席としたものです。優先席はJR東日本全体で赤の背摺りに灰色というか黒というかの座面の組み合わせを標準としていますが、背摺りに入る斜めストライプは本来本形式の通常席に合わせたデザインだったはずのものです。優先席区画は吊革を黄色いものにする動きがありますが、よく見ると一部だけ優先席としている箇所でも律義に変更しています。
車端部は3人掛け。ボックスシート車においてはここの中間席が他人に挟まれる可能性のある数少ない席となります。
乗務員室の拡大の煽りを受け、直後の扉間は4人掛けに縮小されています。ほとんどの席で2人~3人刻みでスタンションポールなど何らかの区切りが入る中、この区画だけはそれがありません。しかも最新形式のE235系まで特に変わる様子もなく…
各先頭車には車椅子スペースを設置しています。設備としては壁に設けられた線路方向の手摺りや壁掛けヒーターなど最低限、どちらかというと立席スペースとしての役割の方が強いかもしれません。2019年に再度乗車すると床にピクトグラムをあしらった敷物が加えられていました。
ボックスシートは基本編成の千葉方3両のみに設置しています。基本的な造りはロングシートをベースに、背摺りの高さを嵩上げしてクロスシートにしたような恰好です。クロスシートでも片持ち式というのは初めて写真を見たとき純粋に驚いたものですが、最初の編成では通路側に細い脚があったようで… 1人あたり幅は450mmとロングシート同様ながら窓側席は余裕が全く無いため窮屈、ボックスピッチ1500mmは「シートピッチ改善車」以降の国鉄近郊型よりも少しだけ広がりました。肘掛けは出入りを考慮してか国鉄近郊型よりも短くなっています。
しかし背摺りの嵩上げした黒い部分、材質面では非常に硬く頭を預けるのは不可能、また形状面でも何故か上部が反っているなど全く話にならない造りです。更に恐ろしいのは、このどうしようもない構造の座席が新造車でも大した変更もなしに使い続けられているという点…
ボックスシートの両側には2人掛けロングシートを配置。この座席配置のお陰でボックスシート車は着席定員が6人増えています。両側に大きな仕切りがあるような格好で、1人当たり幅が他と同様450mmあるとはいえ何とも窮屈そうな印象です。写真の優先席は後から追加指定されたようで、座面をよく見ると黒いモケットの下に通常席の青いモケットが見えています。そしてこの写真を見て気づいたんですが、大型袖仕切はボックスシートの背摺りと同じ高さなんですね…
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