JR九州811系|FTN trainseat.net

JR九州 811系

写真: P10

国鉄時代から続く近郊型電車の冷房化を早々と完了させたJR九州ですが、中には製造から30年程度が経過する421系も含まれており置き換えが望まれていました。また1989年には福岡市で「アジア太平洋博覧会」の開催もあり、競合する西鉄も新特急車8000形を投入…この流れは同時期の名古屋でも聞いたような話ですが、オールクロスシートで臨時急行にも使用できるハイレベルな設備を持った近郊型電車として登場したのが811系です。車体は415系1500番代同様のステンレス製で先頭部は鋼製、貫通型ながら貫通路を非常用と割り切ったのはJR西日本の221系と同様です。足回りは783系と同等のサイリスタ位相制御、4両編成を組みますが中間のT車を脱車し3両編成での走行も可能な設計です。

1993年までに28編成が製造されましたが、1992年以降製造の編成は車内に相違があり100番代に区分されます。製造から25年以上が経過した2016年からはオールロングシート化・VVVF制御化など大幅なリニューアル工事が進行中で、本項で紹介する姿もそう遠くないうちに過去のものになるようです。1編成が事故廃車されたため、現在は4連27編成が鹿児島線門司港~荒尾間を中心に活躍、一部は長崎線や日豊線にも足を延ばします。


P0-車内全景P100-車内全景

車内全景です。以後のJR九州の派手な電車に比べると随分落ち着いた印象ですが、それもそのはずお馴染み水戸岡氏が関与する前の電車となります。ちなみに本形式登場時点で同氏がJR九州絡みの案件に携わったのは僅かにキハ28・58形「AQUA EXPRESS」のみ、485系を赤く塗って人々が驚くのも翌年のことです。
一見同じように見える2枚の写真は左が0番台・右が100番代で、扉間に座席を5列並べた点は同一ながら100番代では扉横の座席を固定化して扉周りのスペースを確保しています。100番代の方は313系0番代と同様、補助座席の有無を除けば関西圏新快速の面々とも同等の配置ですが、0番代の扉間全転換・車端ボックスは類例が少なく「セントラルライナー」の313系8500番代くらいでしょうか…

P0-車端部P100-車端部

車端部です。左が0番代・右が100番代ですが、この区画に関しては両者同一で消火器の有無は向きによるもののようです。

P0-乗務員室仕切

乗務員室仕切は同時期の221系や311系と同様に仕切戸や車掌台側の窓を大きく取っており、眺望に配慮しています。車掌台側に設けられた箱は何やら機器が収納されている様子、また運転台側の窓はフィルムが貼られていますが、九州鉄道記念館のシミュレータ(冒頭に記した「事故廃車」を有効活用したもの)にはありませんので何れも後年の変更のようです。

P0-車端部2P0-トイレ

鹿児島方先頭車のクハ810形の車端部にはトイレを設置、扉寄りの壁には311系のような公衆電話こそありませんが例によってゴミ箱を設置しています。無いと言えばもう一つ、本形式は221系や311系のような情報案内装置がありません。
なお100番代のうち2編成は臨時列車など長距離運用への充当を見据えて中間のサハにもトイレを設けており、200番代に区分されています。登場時に存在した長距離運用も近年は無く、本項執筆(2020年春)時点でリニューアルされた1編成はこの中に検測機器を搭載し「RED EYE」の愛称を付与され活躍中です。ちなみに本項の100番代の写真はトイレ付サハを組み込んだ編成で撮影しているのですが、降車してからそれに気づいたんですよね…

P0-トイレP0-トイレ2

トイレは国鉄近郊型の標準配置で和式便所ですが、突然の緑色には驚いてしまいます。

P0-扉P100-扉

扉は415系1500番代と同等、以後の形式とは異なりステンレス無地としています。写真はどちらも中扉で左が0番台、右が100番代ですが扉付近のスペースの差は一目瞭然。腰部の「床に座らないでください」ステッカーは九州標準です。

P0-天井

天井は一般的な配置ながら、カバー付き照明と前飾りのある荷棚がグレードを高めています。吊革は当初扉付近のみでしたが、後年座席部にも追設しておりご覧のように取り付け座が目立っています。

P0-床

床は黄味の強いクリーム色。写真手前のような通路部のみ柄入りなのが本来かと思いますが、経年の影響かこの部分の補修跡が目立つ印象です。

P0-窓

側窓は一段下降式ですが、窓割と座席配置が合っていないのは窓寸法を415系1500番代と共通化した結果とされています。カーテンは巻き上げ式、2段階での調整が可能です。

P0-座席(転換)P100-座席(転換)

座席は概ね2種類、まずは転換座席から。独立したヘッドレストや六角形の取手など独特のデザインで、モケットは当初から青系と紫系で分けていたようです(現在は色合いは同一ながら市松模様の標準品)。左は0番台、右は100番代で、基本は同一ながら窓側肘掛の形状が異なっています。シートピッチは910mmと標準的な寸法、脚台は221系や311系と同形状のようで前席下まで足を伸ばすことも出来ます。

P0-座席肘掛2P0-座席肘掛

「喫煙車」の存在が許されなくなった現代ですが、本形式登場時の北部九州地区の近郊型電車には喫煙車が設定されていました(1995年廃止とのこと)。喫煙車に必須の灰皿は特急形の座席と同様肘掛に仕込んだ結果、他の地方では見られない分厚い肘掛が出来上がったようです。もっとも喫煙車は1編成1両のみで、他の車両は塞ぎ板で対応しています。

P0-仕切1P0-仕切2

扉間全席を転換座席とした0番代のみで見られる単独の端部仕切です。221系のような腰当はありませんが、板状の部分の上3分の1は両側ともモケット張りとしています。単なる仕切にしては厚めに見えますが何か仕込まれている訳では無さそう、足元は塞がっていますが蹴込を設ける配慮があります。

P100-座席(固定)P100-座席(固定・優先)

100番代は扉横を固定座席としています。JR九州の電車は優先席を車両中央に設けている点が珍しく、優先席の文字やピクトグラムの入った白い枕カバーを被せています。

P0-座席(ボックス)

車端部はボックスシート、ボックスピッチは1750mm程度あるようで余裕があります。妻面側の座席が幾分狭めなのは近郊型電車のお約束です。

P0-ゴミ箱

九州地区の近郊型電車では標準設備となった感のあるゴミ箱ですが、これは本形式が初お目見え。 単にサービス向上の一環だったのか、あるいは臨時急行への充当を見越してのものだったのか不明ですが、現在に至るまで使用可能(しかも中間車は1両2か所!)というのは驚きです。


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