415系800番代|FTN trainseat.net

JR西日本 415系800番代

C10C07R

1991年に直流電化された七尾線では、最低でも金沢への直通が必須ですからローカル列車用の交直両用車が必要となりました。しかし厳しい台所事情の下、関西圏の113系0・800番代を巧みに組み替え3連11編成を組成、機器は交流区間を走行することが無い福知山線の485系から転用することで交直両用の近郊型電車である415系を作ってしまいました。外観は塗装こそ改められたものの大きな変更は無く、パンタ搭載部の低屋根化や車内への機器室設置に伴う窓閉塞など機器追設に絡むものが主。一方機器は中間の電動車に元々あった機器を外して交流機器等を設置、乗務員室配置等は413系に近づけるなど大きな改造を行っており413系や475系と言った既存の交直流車とも併結可能です。
登場から一貫して七尾線を中心に運用、一時は同線のほぼ全ての普通列車に加え一部の急行「能登路」まで本形式で運転していたほか、2014年までは北陸線小松までの運用も存在しました。2010年からは国鉄形電車の単色化に伴い塗装を茜色に変更、113系としての製造から50年程度が経過した2015年には413系6編成も七尾線運用に投入されましたが本形式からの廃車は2編成に留まり、本格的な置き換えは521系100番代が七尾線に直接新製投入される形で行われます。

そういえば会社に七尾線沿線出身で通学にも電車を使っていた後輩がおり、何の拍子かこの電車の話になったことがありました。
管理人「なんか週末知り合いが名古屋から来てな、七尾線に行くねん、そうそうあの赤いのが目当て」後輩「どうしてそんなのを見に来るんですか」管理人「50年物でもうすぐ無くなるのよ」後輩「そんな物に乗せられていたんですね」…さて車内はどんな様子でしょうか。


415-車内全景

まずは車内全景から。車内構成は「3扉・セミクロスシート」で変わりないものの実際は座席の交換や座席配置の変更も実施しており、こと座席配置に関しては113系の面影を探す方が大変かもしれません。また415系化改造までに延命工事を実施して化粧板の交換等を実施していますが、「まで」と言うのがポイントで113系時代に延命工事を受けていた車両もあるようです。いずれにせよ内装は外観ほどの古さを感じることは無く、413系や475系に比べても鮮やかな色合いで登場時は目立ったことと思います。

415-車端部1415-車端部2

車端部です。本グループの元となった113系0番代は扉付近がロングシート、妻面寄りはボックスシートとしていましたが、本形式への改造に際し全てロングシートに改造しています。右写真は中間車の七尾方車端部で、配電盤を追設した関係で向かって左側の窓配置が他と異なるほか、車内にも機器箱が大きく張り出しています。

415-車端部3

金沢方先頭車にはトイレを設置。ここは種車からの座席配置を維持している数少ない箇所で、変更点と言えば貫通扉や座席袖仕切が交換されている点くらいでしょうか。貫通扉の化粧板が先ほどと異なっているのは気になりますが、これは冒頭に記した難解な組替と延命工事施工時期の相違によるもの…だと思います。

415-トイレ1415-トイレ2

トイレは従来のまま。大きめの明り取り窓も最近は見かける機会が少なくなりました。ここも配電盤が客室側に張り出していますが、塗装仕上げなところを見ると113系時代の取付でしょうか。

415-乗務員室仕切1415-乗務員室仕切2

乗務員室仕切です。左は金沢方先頭のクハ415-800で113系本来の乗務員室であるのに対し、右の七尾方先頭であるクモハ415-800は福知山線転用時(800番代化)に「シートピッチ改善車」並みの運転台ブロックを接合し先頭車化改造しています。ただ前者は仕切戸以外の窓を塞ぎ機器箱を増設、後者も機器箱を設けた関係で通常3人分ある座席が2人分しかありません。

415-天井415-天井2

天井です。写真は集中冷房車の様子で、中央に風洞を設け両脇に照明を設ける一般的な構成です。クモハ415形のみ分散冷房のWAU102を搭載する車両もありますが、2両のみの存在(しかも1両は先行で廃車)とあって乗車の機会には恵まれなさそう。中間車の七尾方車端部にはパンタグラフを搭載しており、冒頭にも記した通り交流機器の関係で低屋根化されています。なお照明は延命工事の際に追加されたとの由、また幾つか紛れている形状の異なる灯具は非常灯を兼用した照明で、デッドセクション通過時にも点灯し続けます。

415-床

床は濃いめの茶系。

415-扉

扉です。種車の中には所謂「塗りドア」で登場した1967年以前の製造の車両もありますが、流石に全てステンレス製に交換されているようです。ロングシートが無いので広くなった立席スペースは700mm程度あるようで、大阪環状線の323系ほどでは無いものの結構な広さを誇り詰込みも効きそう。半自動扉ボタンは113系の扉機構を流用して開閉が重いことから追設されたものですが、沿線利用者もまさか後年になって手動で扉を開閉させる413系が定期的に乗り入れてくることになるとは思わなかったでしょう。

415-窓

窓周りは大きな変更が無く、外観から判る通りユニット窓ではありません。窓は下段の開閉金具が撤去されており上段だけ下降可能、カーテンは巻き上げ式で通常窓は4段階、戸袋窓は2段階での調整が可能です。

415-ボックス2415-ボックス

座席を見ていきましょう、まずは扉間のボックスシートから。急行「能登路」への充当も考慮してかボックスピッチ1700mmと急行型電車を凌ぐゆとりの寸法を確保、座席自体も大型で窓側にも肘掛の付いたバケット形状のものに交換されました。北海道のキハ54形500番代に端を発し、広島地区でもごく一部の115系制御車でも見られた座席ですが、肩部の取っ手は大型のものに変更(他形式では本グループの取っ手の土台に相当する部品を取っ手として使用)しているほか、頭部をビニール仕上げとしている点などが異なります。また広島地区の115系では扉側に補助座席を設けた例もあったようですが、流石に本グループでは設けていません。

掛け心地は背摺りの適度な傾斜やバケット形状の座面、そしてゆとりのボックスピッチのお陰で比較的良好です。コイルバネ台車を履く電車が単線の七尾線を100km/hで爆走する様は中々良いものですが、空気バネ台車の413系と比べてしまうと乗り心地の面ではどうしても劣ってしまいます。

415-6人掛け415-6人掛け優先

車端部は6人掛けロングシートが基本。扉寄りにあった3人掛けをそのまま生かし、妻面側のボックスシートをロングシートに置き換えた格好になりましょうか。座席形状は113系と変わりません。優先席は妻面側に設けられ、現在は緑地にピクトグラムをプリントしたモケットを使用しています。
袖仕切は冷気を防ぐべく荷棚の高さまである大きなものを使用、窓の高さに相当する位置は透明アクリル板を使用しています。これだけ大きな仕切りを採用した結果として扉横の握り棒を取り付ける余裕が無くなり、袖仕切側に設置している点が特徴です。

415-6人掛けスペーサ

妻面側をよく見てみると、一番端には背摺りが無くモケットを巻いたスペーサーで隙間を埋めていることに気付きます。扉寄りの3人分(1300mm)は元の位置から大きくは動いていないはず、それに対し妻面側のボックスシートはボックスピッチが1420mmですから、これを扉寄りと同じ寸法のロングシートで置き換えるとこうなってしまうということですね。これが肘掛サイズの機器箱であれば特に気にしなかったかもしれません。

415-5人掛け415-5人掛け機器箱

中間車の一部箇所は配電盤を追設したため5人掛けとしています。

415-2人掛け415-2人掛け優先

2人掛けは乗務員室直後(車掌台側)に設置。前述の経緯から乗務員室周りの構造は大きく異なっており、いずれも2人掛けながら優先席とされた金沢方先頭車(右写真)は横に如何にも後付けと言った趣の機器箱が鎮座します。

415-3人掛け415-ボックス11

最後にトイレ横を見ておきます。側扉寄りが3人掛け、トイレ横はボックスシートとしていますが、ボックスシートは従来品をそのまま使用しているのでボックスピッチ1420mm、しかも妻面側は狭幅と明らかに見劣りがします。ここはなるべく避けたいところですが、そもそも座席数が少ない本形式では贅沢を言えない場面もあり…


trainseat.net>JR西日本目次に戻る

inserted by FC2 system