京浜急行2000形|FTN trainseat.net

京急2000形(ロングシート化後)

写真: kq2051

未だに京急の快速特急と言えばこの車両を連想される方もいらっしゃるかもしれません、今回ご紹介するのは往年の特急車2000形です。1982年に600形の置き換え用として登場したのですが、実はこの時日中の快速特急は過半数がロングシートの1000形に置き換えられていたとのこと。従来の京急の車両とは大幅に異なる車体、塗装は800形で採用された赤地に窓周り白を引き継ぎ…というかこれを優等車用の塗装としたため800形が他形式同様の塗装に変更されてしまいました。内装はほぼ全てクロスシート、扉間は国内では数少ない集団見合い式の固定座席を採用した点も特徴でした。この車内設備は好評で、登場の翌年には京急初となるブルーリボン賞を受賞しています。
8連・4連各6編成が製造され、日中の快速特急は全てクロスシートの2000形での運用が可能になりました。また1992年からは夕方ラッシュに定員制列車「京急ウイング号」にも充当されました。

しかし1998年から後継車となる2100形が登場すると、3扉・ロングシート化が実施されます。ダイヤの関係で8連の運用が朝夕しか無い時期も続きましたが、現在はエアポート急行を中心に活躍しています。一方4連車は普通から快特の増結まで幅広く活躍していましたが、この頃終日走り回っており走行距離が長くなったか8連に先駆け全廃。8連も廃車が進行、2018年に引退しました。


kq20-車内全景

車内全景です。元は2扉・クロスシート車でしたが、車端部はボックスシートを残し改造で中扉を新設しています。床材や化粧板、座席モケットとも一通り交換されていますが、改造前と同様に暖色系の色遣いとした点は特筆されます。そしてこの色遣いや車内構成は新1000形や600形改造車、1500形の更新でも採用されてすっかり当たり前になりました。

kq20-車端部

車端部です。ボックスシートを存置したためモケット・化粧板とも交換してはいますが、ここだけ見るとあまり変わっていないようです。妻窓を廃し機器箱を設けているようで、貫通路は一段奥まった位置になります。そしてその貫通路なんですが、一瞬自分の目がおかしいのかと思いましたがやけに狭いです。壁側の座席を他と同じように作った結果のようで、他ではあまり見られない割り切りです。

kq20-乗務員室仕切

狭いのは貫通扉だけじゃなかった乗務員室仕切です。2100形の如くクロスシートがあるわけでも無いのに…と思いましたがロングシートとこの乗務員室仕切は800形とほぼ同じ造りのようです。この形式の前後を見てもこれより広い訳ですが、ここまで極端なのも前面が非貫通で乗務員以外出入りすることが無いからでしょう。前面窓は比較的大きめ、前面展望も楽しめます。

kq20-扉

扉は京急初の両開き。ここまで京急の車両は頑なに片開き扉と前照灯1灯に拘っていたのですが、これは同社の副社長にまでなった日野原 保氏の強い信念によるものとされています。その扉には特急車ということで化粧板を貼っていますが、最近は中央部に黄色いシールを貼って注意を促しています。

kq20-床

床はクリーム色、フットラインなどは特にありません。同年登場の2100形と同じものと思われます。

kq20-天井

天井です。左右に空調吹き出し口と吊革、その外側に蛍光灯を設けていますが関東では珍しいカバー付きとしています。吊革は空調吹き出し口を跨ぐように設置される金物から支えられていますが、これは2扉時代の扉付近と同様のようです。

kq20-窓kq20-窓2

窓は元々ボックス席になる部分が一段下降窓、それ以外が固定窓でした。ボックス席は車両中央と車端部でしたが前者は扉増設で姿を消しており、現在の扉間はサイズの異なる固定窓が1枚ずつ設けられています(手前が本来のサイズ)。固定窓部は引き続き横引き式カーテンを採用、荷棚の形状と共に特急車時代を想起させます。一方ボックス席の一段下降窓ですが、カーテンは巻き上げ式でストッパーは下部の1か所のみ。これは800形と同様なのですが、2扉時代の写真を見るとこの位置には横引き式・巻き上げ式を共に設置していたようで、流石にこれは驚きました…

kq20-8人掛け

座席を見ていきます。まずは扉間の8人掛けロングシートから。片持ち式座席に大型袖仕切は何れも京急初採用、前述したように赤系のモケットも今までには無かったものです。一方で以後の形式には設置されている座席間のスタンションポールは設けられていません。座席そのものは、写真で見た限りではありますが1700形のバケットシート採用車に近いものを感じます。1人当たり幅は455mm、座面はどちらかと言えば硬めではありますが厚みがあってしっかりした座り心地です。

kq20-ボックス1kq20-ボックス優先1

車端部はボックスシートをそのまま残していますが、モケットとヘッドレスト部のカバーも交換されています。元は窓側がライラック色・通路側がエンジ色で、ヘッドレスト部のカバーは銀色に近いものでした。座席は転換クロスシートがベースのものとは違って背摺り・座面とも自然な形状です。右側の写真の扉側座席をよく見ると脚台が見えませんが、かつてクロスシート車を導入するにあたり標準軌の各社が頭を悩ませていた主電動機点検蓋ですが、本形式では通路側の脚台を廃して対処しています。ボックスピッチは1720mmと広めですが、座席の奥行が広いことが主因のようです。
ここの部分がクロスシートのまま残った点について、当時の京急はクロスシート車を次々投入していたのでその流れだろうと思っていました。しかし形式図を見ると、ここをロングシートにしても壁の厚さのせいで5人掛けには出来そうに無いんですね。もしかするとそういう理由もあったのかもしれません。

kq20-補助座席kq20-補助座席2

2扉時代の車内構成だとお約束の感もある補助座席、本形式でも設置されています。重さを掛けていないと畳まれるタイプで、ご丁寧にその旨の注意書きもあります。確かに関東圏ではあまり見かけない設備かもしれません。使用の可否を示す表示灯も設置されていますが、ここは点灯していると使えない、つまり撮影時には使えなかったと言うことで残念ながら展開状態を拝むことは出来ませんでした。本形式に限らず最近は中々ロックを解除しない、みたいな話も聞きますが実際のところどうなんでしょう。

kq20-2人掛け

乗務員室直後は2人掛け。ここは元からロングシートで、座席・袖仕切りとも800形に準じた形状です。モケットや袖仕切の化粧板は改造の際に周囲に合わせています。

kq20-車椅子スペースkq20-6人掛け

先頭車には車椅子スペースを設けており、その脇は6人掛けとしています。ロングシート車で車椅子スペース付きというのは意外にも京急初、以後の形式はこの部分を5人掛けにしています。車椅子スペース自体はレール方向の手摺りを1本追設しただけの些か寂しいもの。車椅子スペース側の袖仕切は800形と同様のものですね。

kq20-運転台

運転台は800形に続いて右手ワンハンドル。


冒頭の一文、小さいころに本で読んだだけの京浜急行に憧れた自分のことでもあるんですね。え、いつの本を読んでたんだ? まあそれはそれとして、未だに現在も活躍する各形式の内装の源流が2000形にあると思った管理人は、どうしてもその車内を記録しておきたいと思ったのです。しかし現在の2000形、車内に関しては時間を考えないと意外と撮り辛いんですね。三崎口に行く形式なら何も考えなくて済むんですけど、三崎口まではほとんど行かないと聞いたもので…

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