京急2100形|FTN trainseat.net

京急2100形

写真: kq2141_2

京急の顔として活躍してきた2000形が登場から15年、また同社の創立100周年も迎えた1998年、新たな顔として登場したクロスシート車が2100形です。前面形状は600形を踏襲しつつもワイパーカバーに大きく形式名を入れたのが目立ち、また側面は片側2扉で扉間を連続窓とした優等車らしい雰囲気。機器類に舶来品を用いたのも特徴で、特にドイツ・シーメンス社製のVVVFインバーターは起動時に音階を奏でることでも話題になりました。高速性能を重視し加速は幾分控えめだった2000形とは異なり、こちらは地下鉄直通車と変わらぬ鋭い出足から120km/hの高速運転を行います。

8連と4連を製造した2000形とは異なり、本形式は8連ばかり10編成の陣容。主な活躍の場は日中を中心とした線内快特と平日朝夕のライナー列車「ウイング号」ですが、前面貫通扉を設けたお陰で線内快特は都営浅草線との接続駅である泉岳寺発着が可能になりました。外国製制御装置は国産品との相違が多く扱いに難儀したようで製造から15年足らずで早々と全車を国産品に更新、また登場から15年程度経過した2013年からは車体更新も実施、車端部側窓の開閉化と前面非常扉にマスコットキャラクターのステッカーを貼り付けたことで印象が変化しています。本項では主に車体更新後の姿を紹介、必要に応じ更新前の様子も補足します。


kq21-車内全景

まずは車内全景から。京急の2扉車はボックスシートの先代600形→集団見合い式の2000形と進化しましたが、遂に転換座席のお出ましです。その様は凡そ関東私鉄の車両とは思えないものですが、全国的に見ても「2扉・転換クロスシート車」は既に退潮期に差し掛かっていた頃の登場です。

kq21-車端部

車端部は2000形・600形に続きボックスシートを配置。国鉄・JRのように通路幅に合わせた幅狭の席を用意するようなことはせず、妻面寄りの座席の手摺りや肘掛が容赦なく通路側にはみ出しています。貫通扉は全車両側に設けられていますが、京急の場合は優等車に限られるようです。

kq21-乗務員室仕切

乗務員室直後は600形に続き前面向き座席を設置。仕切は従来車と同等で窓サイズもそこまで大きな物ではありませんが、やはり前向き座席の効果は絶大。先頭狙いの乗客も珍しくありません。

kq21-天井

天井は中央部をFRP製として丸みを持たせています。吊革は扉付近のみの設置、照明は元々カバー付き蛍光灯でしたが更新工事でLED式に変更されています。

kq21-床

床は模様の入ったクリーム色。

kq21-扉

扉は化粧板仕上げの両開き、幅は通常の車両より少し狭めの1200mm。

kq21-LEDkq21-LCD

京急初登場の情報案内装置はLED式でしたが、その後1500形や600形にも追設され現在では京急の全車が装備しています。更新工事では液晶式に交換され右側に寄せて設置、左側には大きめの広告が鎮座します。

kq21-窓kq21-窓(車端)

側窓は2席に1枚の大型窓でカーテンは横引き式、窓框は傾斜が付けられており物は置けません。元々すべての窓が固定式でしたが車端部の窓は更新工事で下降窓に改造され、カーテンも巻き上げ式となりました。なお2017年から「ウイング号」が定員制から座席指定制に変更されたことに伴い、座席番号ステッカーが荷棚の前飾りに貼り付けられました。

kq21-転換座席kq21-枕カバー

座席を見てみましょう。扉間は舶来品(ノルウェー製)の転換座席を並べていますが、特徴は枕部の中折れ機構の採用と乗客による任意転換が出来ないこと。シートピッチ850mmは2000形と同一、ライナー列車「京急Wing号」への充当を考えても2000形と同一の座席定員を死守しつつ快適性を維持する必要があったものと思われます。正直このシートピッチでは任意転換されては狭くて仕方がありません、これよりシートピッチの狭い車両というと名鉄7100系くらいでしょうか。それでもこの座席形状から強引に手動転換を試みる乗客が少なくなかったようで、通路側の枕カバーにのみ「イスの向きはかえられません」のプリントがなされています。

もう少し座席を細かく見ていきますと、背摺りはこの手の座席にしては背が高く、頭部は折れるだけでなく1席毎独立しています。着座すると前席の圧迫感は結構なものに感じますが、これは狭いシートピッチだけでなく背摺りの高さも相まってのことでしょう。背摺りのバケット形状の割に座面は平板な感じ、もちろん傾斜はありますが物足りない感じではあります。青系の座席表地は京急の標準でしたがこれは本形式が最後、それもスウェーデン製の赤い水玉模様入りと中々派手なものでしたが、更新工事で模様は同じながら国産のモケットに張り替えられたようです。通路側肘掛も座席と同じ青系に塗装、登場時は窓側にも肘掛を設けていましたが更新工事よりも前に撤去されています。

kq21-補助座席kq21-補助座席表示灯

扉横には補助座席を設置。中部・関西圏では大きな箱に格納される形状が主流ですが、こちらは仕切が背摺りを兼ね座面は剥き出しという比較的シンプルな形状です。ロック機構があり混雑時には使用できませんが、残念ながら自分は使用できる場面に遭遇したことがありません。先頭車に設けられている車椅子スペースは転換座席1脚の代わりに場所を確保したような格好で、補助座席もその分後ろにずらして設置しています(写真を撮り損ねたようで何れ追加します…)

kq21-ボックスkq21-ボックス優先

車端部はボックスシート。扉間は転換不能ですから、グループでのお出掛けには車端部を狙うことになりそうです。従来枕カバーの色だけで区別していた優先席は、更新工事に合わせて色合いを反転させたモケットを使用することで目立たせています。ボックスピッチは1760mmとかなり広め。

kq21-固定kq21-固定優先2

座席単体で見てみましょう。通路側肘掛は出入しやすくするためかかなり寸足らず、文字通り肘しか置けません。右写真の座面跳ね上げ機能は空港アクセス列車への充当を見据えてのものですが、実際に使用する場面はあるのでしょうか…

kq21-固定(先頭部)

乗務員室仕切直後も固定座席ですが、こちらは座面の跳上げ機構を省略する一方で立客の圧力に負けないよう背摺りを強化しているとの由。足元スペースは乗務員室仕切に蹴込を設けて狭さを軽減しています。不思議なのは枕カバー形状で、転換座席とも車端の固定座席とも異なる妙に幅広のものを用いています。


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