京成3500形(更新車)

写真: ks3556

1972年に登場した3500形は丸みのある前面が特徴の「赤電」から一変、角ばったステンレス車体で登場しました。ただメーカーの関係かオールステンレス車体という訳に行かず、後期製造車を除いて私鉄では珍しくセミステンレス車(外板のみステンレスを使用)である点が特徴です。外板ステンレス化で軽量化できたのか、京成初の冷房装置搭載も実現しています。10年に亘って4連24編成が製造されました。
製造から25年程度が経過した1996年からは更新工事が開始されましたが、平妻だった前面は三面折妻になりスカートも設置、扉間は窓割自体が変更され…と随分大規模な改造で印象が一変しています。もっとも工事費が想定以上に高くついたそうで半分強に施工したところで力尽き、結果的には未更新だった後期車が先に廃車されています。

電動車ユニットの1台車のみ付随台車とし、それを背中合わせに連結したような「4両半固定編成」とでも言うべき独特の機器構成は従来の「赤電」軍団を踏襲。大幅リニューアル後も足回りはそのままですので本線では3ユニット繋いだ6両編成で普通電車として、また4両編成で運用できるほぼ唯一の形式でもあるので両数制限のある金町線などは本形式を中心に使用しています。更新車でも製造から50年程度が経過し廃車が開始されましたが、一方で東成田・芝山鉄道方面でのワンマン運転に抜擢される新たな展開もあって暫く活躍を続けることになるでしょう。


ks350-車内全景

まずは車内全景から。外観同様徹底的に手を加えており、細かい部分はともかく同時期の新造車に極力仕様を近づけています。一見しただけでは1970年代製の電車とは思えない仕上がりと言えましょう。

ks350-車端部2ks350-車端部1

車端部です。電動車ユニット間は広幅貫通路、ユニットの端は妻窓・貫通扉付きの狭幅貫通路となっています。後者は先頭車との連結を考慮しての構造ですが、それならば全部そうすれば…とならず広幅貫通路を用意したのは当時と現在の感覚の違いでしょうか。なお貫通扉は開け放たれていることが多いようです。

ks350-乗務員室仕切

乗務員室仕切です。中間に連結する際は仕切戸を運転台側に、前面貫通扉を車掌台側に折り畳むことで通路を形成します。3300形に比べ車掌台側の窓が運転台側と同じ小さなサイズになってしまい、座っての前面展望はほぼ不可能になってしまいました。ただ驚くべきはこの構成が最新の新3100形まで大きく変更なく踏襲されている点、もちろん細かな部分は変化がありますが、これには恐れ入りました。

ks350-扉

少し暗めの写真になってしまいましたが扉です。ここは更新前と大きく変わっていない模様、近年は戸袋への引き込みを喚起する黄色テープが縦に入っています。

ks350-床

床はベージュ色、控えめながら中央のみ柄入りとしてフットラインを形成しています。トラップドアは標準軌の電車だと横に3枚並ぶ例が多いような気がしますが、京成は狭軌の車両のように中央の1枚のみとしているようです。

ks350-天井

天井です。大きな更新工事でしたが屋根構造までは変更しなかったようで、従来通り分散冷房と補助送風機としての扇風機が設置されています。ただ蛍光灯の増設で明るい車内を実現、空調も冷房はマイコン制御に、扇風機も強弱切り替えが可能になるなど進化しています。

ks350-窓

側窓は従来扉間3枚・車端2枚の構成でしたが、これを上段下降(バランサー付)・下段固定で扉間・車端とも2枚の構成に大変身。お金かかってそう… カーテンは巻き上げ式で2段階の調整が可能です。

ks350-8人掛け

座席を見ていきしょう、まずは扉間の8人掛けロングシートから。脚台から造り直したようで、京成標準と言うべき紫色のモケットのバケットシートを搭載しています。ただリニューアル後一度座席が交換されており、当初はオレンジ色モケット(途中からこのモケットに変更)で1人毎の区分がはっきりした直線的な印象を受ける座席を搭載していました。ところが掛け心地が中々ハードなものだったとの由、10年程度で交換されたと言いますから余程の物だったのでしょうか。袖仕切は3700形と同様パイプと袖板の組み合わせ、袖板の上面は背摺りの端部を隠すような形状としています。

ks350-5人掛けks350-5人掛け優先

車端部は5人掛け、優先席は青いモケットを用いて区別します。妻面機器箱の有無で座席の位置が異なっており、優先席の方(広幅貫通路)は元々6人掛けだったところ1人当たり幅の拡大で5人掛けになった模様。

ks350-2人掛け

乗務員室直後も座席定員が減少、3人掛けから2人掛けに変更されています。1人当たり幅は440mm程度と拡大されたと言え現在の感覚からすると狭め、特にこの区画は片側が壁ということもあってあまり余裕が無い印象です。

ks350-車椅子スペースks350-5人掛け2

リニューアルでは先頭車に車椅子スペースを設置、非常通報装置のほか車椅子固定装置を用意しています。横の座席は5人掛け、車椅子スペース側の袖板は枕木方向のパイプを設けられない分だけ高めです。

ks350-運転台

運転台も計器類を一新しています。一方走行機器はほぼ手付かずですのでマスコンやブレーキは従来通り、電磁直通ブレーキを使用するのも京成では本形式が最後になります。


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最終更新:2022/12/23

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