近鉄5820系|FTN trainseat.net

近鉄5820系

写真: DH22(5722)

ラッシュ時は詰め込みが効くロングシート、閑散時は快適なクロスシート…という両立できそうにないことを両立させてしまった近鉄「L/Cカー」。1996年に改造車で、翌年には新形式5800系が投入され、JRと競合する名古屋線、長距離列車もある大阪線に加え、ロングシート車しか無かった奈良線にも投入されました。乗客はもちろん運用する側も2000年に登場した新世代一般車「シリーズ21」でもL/C座席を搭載したグループが5820系として登場しました。
外観は同年登場の9020系、翌年登場の9820系と同様で、淡い茶色と白のツートンの境界に黄帯が入る従来に無い塗装が特徴です。全編成が6両編成で、以前は何箇所かの「L/C」ロゴで9820系と見分けることが可能でしたが、近年はロゴが撤去されそれすら出来なくなってしまいました。奈良線に5編成、大阪線に2編成があり、前者は奈良・京都・橿原線を軸に阪神の三宮まで直通する運用もあるほか、後者は大阪から伊勢方面への長距離列車でも用いられます。


582-車内全景cs

写真が少し黄色っぽくなってしまいましたが、車内全景はクロスシート時の様子をご覧いただきます。クロスシートは大阪線の長距離列車や奈良線の線内完結列車が中心のようで、京都・橿原線や阪神直通の快速急行はロングシートで運用されています。5800系に比べ、座席モケットと床敷物の変更が効いたのか全体的に明るい印象です。

582-車端部

車端部です。5800系にあった妻窓は他の「シリーズ21」同様に廃止されたほか、貫通路の幅が拡大されています。

582-車端部2

大阪線の2編成にはトイレが設置されています。5800系では対面に座席(クロスシート)が設けられていましたが、本形式では車椅子スペースとしました。

582-トイレ582-トイレ中

トイレの様子です。車椅子に対応するため個室そのものが大型化しており、扉横の握り棒は壁に埋め込まれる形で設置したほか、扉は押しボタンによる半自動式に、また便器も洋式としています。

582-乗務員室仕切

乗務員室仕切です。これも「シリーズ21」共通ですが、前面は貫通式で幌も繋ぐことがあるのにどういう訳だか仕切戸は車掌台寄りとしています。中央に鎮座するのは近年設置された避難梯子ですが、設置に合わせてでしょうか、枕木方向の握り棒を撤去したようです。

582-ローレルプレートs

位置が高いためあまり目立ちませんが、一部編成は乗務員室仕切の左上にローレル賞受賞のプレートが設置されています。

582-床

床は「シリーズ21」共通の灰色系の石目柄、5800系に比べ明るい色です。

582-天井

天井です。一般的な構成ではありますが、ラインデリアや冷房吹き出し口以外にもレール方向のラインが多数入っているのが目立ちます。カバー付きの蛍光灯にもよく見るとレール方向のラインが入っており、初期の「シリーズ21」共通の特徴になっています。吊革はL/Cカー各種だけ何故か五角形の握り手を採用しており、吊革高さは一部を通常より低めにしています。

582-扉2

扉は両開きで片側4か所、従来車に比べ窓の横幅が小さくなったでしょうか。扉間寸法を5800系より少し広めに取ったようで、ほんの少しだけ扉周りに余裕が出来ています。

582-LED

情報案内装置はLED式で扉上に千鳥配置としています。近鉄標準サイズではありますがどうも小さめです。

582-窓

窓は扉間も大きな1枚窓としたことでクロスシート時の眺望が改善されました。カーテンはフリーストップ式。開閉可能な窓は基本的に車端のみですが、先頭車の乗務員室直後の扉間のみ大窓が開閉可能となっています。

582-LC座席1582-LC座席2

座席を見ていきましょう、まずは扉間の可変座席です。L/Cシートを搭載する形式はこれが4形式目(改造車含む)ですが、本形式製造時点でまだ登場から5年未満の新しい座席だったこともあってか既存のL/Cシートとほぼ同様の造りです。そのため背摺りの薄さや硬いヘッドレストなど、悪い点もそのまま引き継がれてしまっています。1人当たり幅は約480mm、シートピッチは975mmで十分な足元スペースを確保しています。
数少ない相違点として他の「シリーズ21」各形式に合わせたのか背摺り下部の形状が少し窪んだ形に変更されており、右写真のように同部分がオレンジ色になっている区画が本形式の優先席となっています。モケットは「シリーズ21」共通の赤系に変更されていますが、肘掛の化粧板は既存のL/Cシートと同様の紫系。

582-LCロングモードs

こちらはロングシート時の様子。

582-LC座席台座

脚台の様子です。1つ上のロングシート時の写真と見比べると、座席中心自体が通路側に張り出していることが判ります。枕木方向に謎の棒が設置されていますが、これはフットレストなんでしょうか…

582-仕切

妙に分厚い扉横の仕切はロングシート時の袖仕切、クロスシート時は着席客と扉付近の立客を分離する役割があり、扉側にはクッションも設けられています。枕木方向はロングシート時を前提にした大きさにしておかないと車内の人の流れが悪くなってしまいますので、ご覧のようなクロスシート時には中途半端なサイズになってしまっています。

582-4人掛けs582-4人掛け優先

車端部は4人掛けのロングシート。5800系が扉間の可変座席と同様の造りだったのに対し、こちらは「シリーズ21」各形式と同じ一般的な形状です…が、袖仕切だけは扉間と同様の分厚いものを用いています。1人当たり幅こそ485mmと恵まれていますが、薄めで座面の傾斜が少ないのは他の「シリーズ21」と同様。

582-車いすスペースs

車椅子スペースです。握り棒はレール方向に2本のみと少なめ、車椅子固定金具もありません。一方ただ座席を撤去しただけでは無く、乗客がもたれかかるための「パーチ」を設置し立客にも配慮しています。


582-運転台s

最後に運転台。電気指令式ブレーキの採用でデスクタイプになりましたが、従来車に合わせたツーハンドル式としています。

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