近鉄8600系(B更新)

写真: X56(8606)

1960年代末から通勤電車の冷房化の流れが起き、近鉄奈良線系では1973年に新形式8600系を投入しました。幅の広い車体は既存車と変わりらない一方、製造時から装備した前面方向幕と他線の冷房車同様に風洞を通して高く丸くなった屋根が特徴です。6年で4連20編成・6連1編成と短期間にまとまった増備でしたが、増備途上での変更箇所が幾つかあるほか他形式の改造車を組み込んだ編成、制御装置を改造した編成もあり意外とバリエーションは豊富。制御装置の改造は制御電動車の電装解除と付随車への電装が絡んでおり、しかも車番は新規付与では無く相互に入れ替える格好になったため自分のようによく分かっていない人間は混乱してしまいます。

1993年からの更新で側面幕を設置、2002年からの2度目の更新(B更新)では車内の改装などを行っています。年1~2編成程度のスローペースでようやく終わりそうな感じのようですが、今回は2006年度に施工された編成を中心に一部2003年度施工車の様子もご覧頂きます。


86AB-車内全景86AN-車内全景

まずは車内全景から。左写真は2006年度更新車、座席表地や床材など内装材は一式取り換えたようですが、同じような色合いの物を選定したためか「幾分明るくなったかな?」程度で印象が大きく変わった訳ではありません。
一方右写真は近年の更新車で採用された新デザインモケットに交換された2003年度更新車の様子。モケットが変わっただけで印象は随分変化しましたが、このデザインは扉や妻面など濃色の化粧板があってこそとでも言いましょうか、些か物足りなさを感じないでもありません。

86AB-車端部86AB-車端部2

車端部は1-2・3-4号車間が広幅貫通路で側窓1枚分、2-3号車間が狭幅貫通路で側窓2枚分となっています。後者は2連2編成から中間に来る乗務員室を取り払った格好ですから貫通路が狭いのも納得ですが、逆に前者の貫通路をわざわざ広幅にしているのはどういった理由なのか…

86AB-乗務員室仕切

乗務員室仕切です。当サイトで紹介済みの8400系では車掌台側を折り畳むことが出来る構造でしたが、使用頻度も低かったのか本形式では通常の構造に変更されています。仕切窓は関西圏の私鉄では珍しく高い位置にあり、座っての前面展望は望めません。

86AB-天井

天井です。蛍光灯はカバー付き、空調吹き出し口の間にあるローリーファンは後年設置された物のようです。

86AB-床

床敷物は砂柄の物に張り替えています。レール方向への帯は床の模様では無く照明によるものですが、実に綺麗に反射しています。

86AB-窓86AN-窓

側窓は扉間(および一部車端)2枚・車端1枚が基本でしたが、一部編成はB更新で車体中央部以外の扉間が大型の1枚固定窓に変更されています。カーテンは巻き上げ式で2段階の調整が可能、荷棚は引き続き網棚を使用します。一方右写真は2003年度更新車の様子、窓は原型を留めており巻き上げ式カーテンは開けるか閉めるかしか出来ません。

86AN-扉

扉は従来品を引き続き使用している模様、座席が扉ギリギリまで迫っており立席スペースは殆どありません。近年は戸袋寄りに黄色いラインを入れています。

86AB-7人掛け86AN-7人掛け

座席を見ていきましょう、扉間は7人掛けです。更新で座席表地を張り替え赤系でも明るめで柄の入ったものになりましたが、近年は入場時に右写真のような灰色系の新デザインモケットに張り替えが進んでいる様子。1人当たりの幅は約430mmと変わらず、シリーズ21との差は歴然。

86AB-3人掛け

車端部と乗務員室直後は3人掛け…と思っていましたが4人掛けのようです。優先席は灰色系の表地を使用していましたが、近年の張替えではオレンジ色に変更(オンマウスで新モケットになります)。また優先席の拡大も行われており、新デザインモケットに交換された車両の車端部は全て優先席となっています。車掌台側仕切は8400系のような折り畳む機構がありませんので、奥の袖仕切も省略されています。

86AB-6人掛け86AB-6人掛け優先

2-3号車間の車端部は6人掛け。こちらもオンマウスで新モケットになります。


86AN-運転台

運転台です。配置はそのまま色調を変更、パネルは茶系の大人しい色になりました。


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