南海1000系|FTN trainseat.net

南海1000系

写真: 1033

関西空港の開業が迫る1992年、南海線・高野線の両方で使用可能な通勤車として登場したのが1000系です。車体はステンレス製ですが灰色地に青とオレンジを用いた新デザインを全面塗装しており、外板も厚板を用いてビートを廃しています。また前面もスピード感を強調したデザインで、新たな南海電車のイメージを示した電車と言えそうです。
2001年までに2連6編成、4連1編成、6連10編成が製造されましたが、1次車は車体幅が狭く、6次車は4連でステンレス地肌が見えている点が特徴です。当初の計画通り南海線・高野線の両方に配属されており、時折融通し合っているようですが、南海線で出会うことの方が多いだろうと思います。本線では近年、2連や4連が8000系や8300系と併結する様子も見掛けるようになりました。今回は車体幅の狭い1次車の車内をご覧いただきますが、2次車~5次車も裾絞りの有無を除けば概ね同一です。


10A-車内全景

車内全景です。4扉・ロングシートの基本配置こそ同等ですが、車内の色遣いに拠るところもあるでしょうか、雰囲気は従来車とは一線を画しているような感じがします。そして奥に見えるものが気になります…

10A-車端部

車端部です。手前のボックスシートも気になりますが、側面配置の変更で車端部が1種類に統一された点も見逃せません。天地寸法が拡大された窓の目立つ貫通扉は、ボックスシートの煽りを受け他形式より10cm以上も幅が狭くなっています。

10A-乗務員室仕切

乗務員室との仕切です。側面割付の変更で乗務員室直後の座席は廃止されましたが、引き続き窓を大きめに取っています。貫通扉に至っては通常の車端部と同様の天地寸法で、前面扉の窓も大きいので、狙ったものなのかは不明ですが背の低い子供でも確実に前面展望を楽しむことが出来ます。

10A-扉

扉です。上部には情報案内装置を千鳥配置で設置していますが、それが無い箇所は広告枠としています。よく見ると荷棚が座席の長さと合っておらず、広告枠を設置しています。位置の割にサイズが小さいので、乗客の目にはあまり入らなさそうです。

10A-LED

当初は文字案内とマップ式の停車駅案内を兼ねたものでしたが、停車駅やダイヤが変わると対応が難しいという欠点があり、本形式も例によって通常の停車駅案内に変更されています。現在は液晶式の情報案内装置が登場しましたので、このような設備自体が過去の物になってしまいました。

10A-天井

天井です。中央にラインデリアが、両脇に空調吹き出し口が設置されていますが、蛍光灯にはカバーを設置しました。「ズームカー」2000系から影響を受けたところもあるのでしょうか、近年の新形式ではカバーなしに戻っています。写真では確認できませんが、吊革はボックスシートの車端部にも独立して設置されています。

10A-床

床は模様入りのクリーム色。

10A-窓

窓は扉間が一段下降式、車端が固定式です。巻き上げ式のカーテンは3段階で留めることが出来ます。特徴的なのが荷棚で、網でもパイプでも無く透明なアクリル板を採用しています。近年では網でもパイプでもない荷棚を各社採用していますが、その動きが大きくなる10年以上も前に南海がこのような試みをしていたという点には驚きました。ただコストが掛かるのでしょう、早くも本形式の最終増備車では網棚に戻ってしまいました…

10A-7人掛け

座席を見ていきます。まずは扉間の7人掛けです。バケットシートの採用と座席幅の拡大が特徴ですが、後者に関しては側面配置の見直しも多分に影響しています。袖仕切りは2000系をベースに改良されたものですが、肘掛として使用する部分に樹脂製パーツを当てる配慮が見られます。灰色のモケットは本形式から採用され従来車にも波及しましたが、どうにも暗い印象を拭えません。

10A-車椅子スペース10A-4人掛け

車椅子スペースは各車和歌山方の扉間に設置されています。1両1か所は多い方だと思いますが、空港利用者の荷物置場という考えがあったのなら妥当なところでしょうか。側面から座席にかけて握り棒を設置、腰部に見える蓋はヒーターでしょうか。新しそうなベビーカーマークと灰色の車椅子マークが気になりますが、後者は最初からこの色だったのか、はたまた…
その横は4人掛けの座席を設置しており、車椅子スペース側の袖仕切り形状が窓との兼ね合いで異なっています。座り心地は程良い柔らかさを感じるものですが、ダイヤと運用の兼ね合いから長距離・長時間の乗車をする機会が少ないのが残念なところ。

10A-ボックス10A-ボックス2

車端部にはボックスシートが登場。側面の割付を変更したことは前述しましたが、形式図を見ると4人掛けロングシートとすることも可能だったはずで、JRとの競合を意識しての設置と思われます。ボックスピッチは1665mmと広めで、妻面の固定クロスシートにありがちな座席幅の切り詰めもありません。座席形状も悪くはないのですが、座り心地の点ではロングシートの方が良いかなあ、と思います。なお右写真の座席下に見える金属製の物体が気になったのですが、座面を折り畳めるとかそういうものでは無く、単なるヒーターのようです。


trainseat.net>南海電車に戻る

inserted by FC2 system