近江鉄道700形|FTN trainseat.net

近江鉄道 700形

写真: omi701

近江鉄道の開業100周年となる1998年、通常運用に入れつつイベント利用なども視野に入れた特別な車両として700形「あかね号」を投入しました。前面は窓を大きく取った直線基調の流線形でスカート付き、クリーム色をベースに水色と赤の帯を入れたその姿はまるで新車ですが、屋根や足回りを見ると何だか様子が… そうですこれは800形と同様西武401系がベースの改造車、それを220形などを生み出した彦根の工場で作ってしまったのです。

他形式に交じって運用されていたようですが、写真のように彦根の車庫で留置される姿をよく見た印象です。種車の製造から50年程度が経過した2019年に老朽化で引退、朝日新聞は本形式を「近江鉄道最後の傑作」と書いていましたが、時が経って本形式のような改造を自社で行う技術は失われているとのことで的を射た表現だった模様。2017年撮影の、晩年の様子をご覧いただきます。

※車内の写真は関西学生鉄道研究会連盟様の貸切列車にて撮影したものです。関係者の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。


omi70-車内全景

車内全景です。3扉・転換クロスシートの構成は滋賀県内のJRでは当たり前な感がありますが、これが近江鉄道の電車で、しかもそれを自分たちで作ってしまったというところがポイントになってくるでしょう。配色は全体的に暖色系、濃いめのクリーム色とした化粧板がちょっと古く見えてしまうかなあ、と思わないではありませんが…

omi70-車端部

車端部です。種車同様設けている妻窓は側窓と同サイズの固定窓としており、ゆとりある座席配置と共に開放感は中々のもの。一方屋根から下りる配管が剥き出しになっているあたりは何ともならなかったようで… そういえばこの区画はロングシートがあるものの吊革は無く、更には荷棚もありません。

omi70-乗務員室仕切

乗務員室仕切は種車と概ね同様の構成に見えます。大きな窓は前面展望にも適していそうですが、乗務員室の寸法が西武401系に比べ約500mmも拡大されているため前面窓まではちょっと遠い印象。

omi70-運賃表

仕切戸の上には運賃表とLED式フリーパターン表示機を設置。

omi70-天井

天井の構造は流石に種車のままですが、蛍光灯を増設すると共にカバーを付け高級感を演出。

omi70-扉

扉は従来車並みですが、床の滑り止めは黄色い範囲が拡大されています。鴨居部の情報案内装置は千鳥配置で、設けられていない箇所もあります。

omi70-床

床敷物は座席モケットと同系統の淡い茶色。

omi70-窓

窓は扉間3枚・車端1枚で前者は連窓風に仕上げた固定窓、高さは927mmと他車にはない眺望が広がります。カーテンは巻き上げ式で2段階の調節が可能、荷棚は網棚ですが窓上にしか設けられていません。

omi70-クロス転換omi70-クロス固定

座席を見ていきましょう、まずは扉間のクロスシートから。扉横は固定・他は転換可能としていますが、JR東日本185系の廃車発生品とあって固定座席はもともと存在せず、転換座席を強引に固定座席に仕立て上げたというもの。シートピッチは1020mmと新幹線並み、内外装とも原型を留めない本形式ではありますが、実は側面割付は西武401系そのままなのです。
なお枕カバーは当初221系のような2席一体ものを使用していましたが、いつの間にか1席毎のものに変更されたようです。

omi70-座席背面

「強引な固定座席」の扉側はご覧のような仕上がり。写真は手摺付きですが、両端の扉付近では整理券発行機付きとしたものもあります。しかし1席毎の枕カバーが裏に回りこんでいるのは何となく違和感があります。

omi70-車椅子スペースomi70-ロングシート

車端部には車椅子スペースを設置、その横は本形式唯一のロングシートとしていますが、出所不明(種車とは形状が違う気がする)の背摺りや座面はまあ良いとして、それに転換座席のソデ体を組み合わせるという荒業をやってのけています。座面に合わせて微妙に斜めに取り付けているというのがまた何とも…


omi70-運転台

運転台周りも大きく変貌、出自の割には近代的に仕上がっています。しかし平面ガラスを組み合わせた流線形、隅柱がかなり太いですが運転席からの視認性という観点ではどうだったんでしょうか…

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