大阪市営地下鉄30000系(谷町線)

写真: 32605

高度経済成長期に路線を一気に拡張した大阪市営地下鉄を支えた30系はその多くが1990年代に新20系によって置き換えられましたが、比較的経年の浅い車両は冷房化などリニューアル工事を受け谷町線で活躍を続けていました。そんな同系も2000年代後半に入ると製造から35年程度が経過、自局保有車で唯一の抵抗制御・発電ブレーキ車でもあったため久々の新形式投入により置き換えられることになりました。それが2008年登場の30000系…以前増備されていたのが「新20系」だったのにどういった番号の飛び方かと思われそうですが、5桁の付番規則は両者同一。路線を示す千位が谷町線を示す「2」ですから32系と呼ばれることもあります。
新20系に続きステンレス製とした車体はビードが無くなりすっきりした印象、ホームドア時代を見越したわけではないでしょうが幕板にも帯を加えた上車端部の戸袋には縦に帯を入れています。前面は丸みを帯び現代的なブラックフェイスではありますが、灯具の位置や帯の入り方に10系や20系を感じ新20系のような奇抜さはありません。主要機器では制御装置に第三軌条線区初のIGBT素子を用いたVVVFインバーターを採用、また頑なにMGを用いていた補助電源装置にはSIVを同様に第三軌条線区で初採用しています。

2008年に先行車的要素を持つ1編成を投入した後、2010年から2013年にかけ12編成を増備し13編成あった30系を全て置き換えました。増備期間がそう長い訳では無いにも関わらず製造時期による細かな差異が少なくないようで、今回は2011年製造の第5編成の写真を軸に要所で2013年製造の第11編成の写真をご紹介します。


32-車内全景A32-車内全景B

まずは車内全景から。数が多く完成度も高かった新20系をベースに要所を現代風にアレンジしたような雰囲気、化粧板と照明の変化で明るい車内にはなりましたが十数年ぶりの新形式な割には他社と比較しても目新しさが今一歩かなあ、との印象はあります。なお写真を2枚掲載したのは製造時期の違いを示すため、左は2011年製造の第5編成に対し右は2013年製造の第11編成です。

32-車端部

車端部です。妻窓を設けた構成は新20系を踏襲しつつ、貫通路は200mm拡大し通り抜けしやすくなりました。

32-乗務員室仕切

乗務員室仕切も新20系の構成を踏襲、大き目の窓が目立ちますが全線が地下の谷町線では運転台として用いる場合写真の通り遮光幕が下げられます。

32-天井

大きく変わったのは天井です。狭いトンネル断面との兼ね合いで薄型化との戦いだった第三軌条線区における冷房装置ですが、技術の進歩で遂に扉間への搭載が実現。車内側への張り出しが無くなり普通の電車と遜色ない室内空間になりました。照明は韓国の地下鉄火災の影響もありカバーを廃しています。扉間の吊革は背の低い乗客に配慮し長さを一部変更している他、後期製造車については枕木方向への枕木を設置しています(冒頭の車内全景写真もご参照下さい)。

32-床

床敷物は10系リニューアル車から続くフットラインの無い模様入りのベージュ色。床下点検蓋は頑なに残しています。

32-扉

扉は従来車同様片側4か所に設置、座席が扉間5人掛けに減少したため立席スペースは従来より拡大しています。扉横の手摺は上下2か所で留めているのが常のところ、下から3分の1あたりの位置でも固定されていることに気付きます。どうも初期の編成はこの位置が下端だったとの由、3か所で留める構造にメリットが思い浮かびませんので設計上の都合でしょうか。

32-LCD

情報案内装置は同局初の液晶式、右側に偏って設置されているのは広告画面設置を見越してのことでしょう。機器のサイズ自体も文字サイズも小さめで、残念ながら視認性は決して良くありません。

32-窓

扉間の窓は従来2分割していたところ大きな下降式の1枚窓になりました。カーテンレールはありますが全線地下の谷町線では使用機会が無く本体は省略されています。

32-5人掛けA32-5人掛けB

同局初の片持ち式を採用した座席を見ていきましょう、まずは5人掛けになった扉間から。従来6人掛けでしたが新20系の1人あたり幅440mmでも寸法的には限界に近く、1人あたり幅を確保するには座席を削るしか無かったようです。そんなこの座席の1人あたり幅は470mmと広め、本形式では座面をバケット形状にして着座位置を明確化しています。モケットは置き換え対象の30系がラインカラーの紫色だったところ、本形式では他路線のリニューアル車等でも見られるオレンジ色で背摺りに着座位置に横8個×縦3個の四角模様がプリントされたモケットを使用しています。製造後10年も経過していないのに衣服と擦れたであろう箇所の褪色が強く出ているのが気になります。

32-3人掛けA32-3人掛け優先B

車端部は3人掛け、優先席は青系のモケットとして区別します。妻面寄りには既存車と同様妻窓下辺の高さまでの機器箱を設置、肩逃しとしても役に立ちそうです。袖仕切は新20系と同様のパイプと袖板を組み合わせた形状、立客との分離を強化するため枕木方向のパイプを板状としたのは名鉄電車でも見られましたが大型袖仕切全盛の2000年代末期にこの形状を採用したのは少々意外です。そして後期車では立客との分離を更に強化するためか枕木方向の板を2段構えとしています。なお板の部分は上掲の写真では2枚とも茶色としていますが、初期編成は灰色との由…編成数の割にバリエーション豊富で趣味者泣かせですね。

32-車椅子スペース

車椅子スペースは各車1か所に設置。握り棒と非常通報ボタン、車椅子固定金具を設けています。


FTN trainseat.net>関西私鉄目次にもどる

inserted by FC2 system