相模鉄道9000系(リニューアル車)

写真: st9703

1993年登場の9000系は先立って登場した8000系と同様前照灯を窓下中央に設けた思い切ったスタイルと、同社のアルミ車では珍しく全面塗装した点が特徴です。足回りは8000系と同様VVVFインバーター制御を採用、駆動装置は相変わらず直角カルダン、ディスクブレーキの目立つ台車と共に独自色を維持しています。ところで本形式の変わったところと言えば主要スペックがほぼ同じ8000系と並行して増備された点、メーカーの相違が要因と言いますが不思議な感覚です。2001年までに7編成が増備され、13編成が増備された8000系と共に同線の顔となりました。

2007年からの塗装変更や機器更新を経て製造から25年程度が経過した2016年から開始されたリニューアルは、相鉄創立100周年と都心直通に向けた「デザインブランドアッププロジェクト」に基づき新たな思想が取り入れられました。まずは数年前に変えたばかりのはずの塗装の変更で、普遍的な古くならない塗装として阪急のマルーンを念頭に置いた濃紺の単色塗装としました。前面は本形式の特徴だった窓下中央の前照灯を使用停止していた急行灯の位置に変更、写真では分かり辛いですが全体を黒に塗っています。
中には2007年からの塗装を経ずリニューアルに至った編成もある一方、1編成はリニューアルを受けず廃車され現在は6編成が活躍しています。新規開業した新横浜方面やJR線方面には乗り入れず、従来の横浜方面への運用を担います。


st90N-車内全景(ロングst90N-車内全景(クロス)

まずは車内全景から、左はロングシート車、右は5・8号車のボックスシート搭載車です。暖色系だった車内から一転、濃淡グレーを用いたモノトーンな車内が印象的です。そしてボックスシート車はボックスシートの存在感が一際大きくなった印象です。

st90N-車端部2st90N-車端部1

黒に近い灰色の化粧板が目立つ車端部です。元々一部を除いて設置されていなかった貫通扉はガラス製として各車に設置されたほか、両側にあった妻窓を塞いだ区画も少なくありません。貫通扉が無かった箇所は戸袋を設けた代わりに妻窓が無いのかと思いましたが、左写真を見ると妻窓が無い側には消火器を埋め込んでおり必ずしもそういう訳では無さそう。

st90N-車端部3

貫通扉は全ての車端部に設置した訳では無く、妻窓が存置されている箇所もあります。

st90N-乗務員室仕切

乗務員室仕切も車端部と同様に濃色の化粧板に交換しています。前面非常口に合わせて車掌台側にオフセットした仕切戸は窓寸法が縮小された様子、機器増設の影響か一部が塞がれていた横長の窓も寸法が縮小され広告枠を設置。お馴染み鏡は位置もそのまま同社のアイデンティティの一つとして存置されています。

st90N-扉(ロング)st90N-扉(クロス)

扉はリニューアルに際し交換された模様、窓ガラスが車内側と面一になり、扉事故を防ぎます。写真は左がロングシート車、右がボックスシート設置車で、後者はボックスシートの寸法を稼ぐため座席を扉に寄せています。

st90N-LCD

鴨居部は車端部の化粧板に近い黒色とし、情報案内装置は地元企業であるコイト電工の液晶式「パッとビジョン」に交換されました。ご覧の通り広告用画面を含め2画面の設置が可能ですが、現在に至るまで1画面で運用しているようです。鴨居部の下面には扉開閉予告灯を設置。

st90N-天井

天井です。火災対策として樹脂製の空調吹出口カバー等は金属製に交換されたほか、照明は調光機能のある反射式LEDとされました。吊革は掴みやすい形状を求めた新形状の吊り輪を採用しています。

st90N-床

床は濃灰色の単色、趣味誌の記事によると車内のトーンに合わせるべく既製品から選定したとの由。

st90N-窓2st90N-窓

窓は扉間2枚・車端1枚、油圧式のパワーウィンドウは存置して開閉用ボタンは操作部が光るタイプに交換されました。カーテンは巻き上げ式で4段階の調整が可能、引き続きボックスシート車は中央に柱が来る格好になってしまいます。ボックスシート車は窓と開閉用ボタンの位置関係が微妙ですが構造上どうしようもないでしょうか、後述の通りクロスシートの背摺りが高くなったためクロスシート側からの操作が難しくなっています。

st90N-7人掛け

座席を見ていきましょう、まずは編成中の大半を占めるロングシート車の扉間に設けられた7人掛けから。背摺り・座面はリニューアル前から流用しているようですが、明灰色のモケットに張り替えたお陰で印象は一変。大型袖仕切は着座時の快適性と車内の見通しを両立させた新設計で、袖仕切の前端とスタンションポールの間に隙間が無いのは珍しいような気がします。1人当たり幅は450mmで従来と同様です。

st90N-3人掛けst90N-3人掛け優先

車端部は3人掛けロングシート。優先席はスタンションポールを黄色く着色、モケットは当初従来車と同じ青系だったそうですが今回撮影した編成はオレンジ系でどうも一貫性がありません(恐らく今後は後者に統一されるでしょう)。なお8000系更新車では通常席と優先席で色を変えていた大型袖仕切ですが、新デザインでは色分けをしないようです。

st90N-車椅子スペース

車椅子スペースは引き続き両先頭車の車端部に設置、例によって妻窓が埋められています。非常通報装置も車椅子利用者による操作を前提とした低い位置のまま変わっていません。

st90N-ボックス

ボックスシートは5号車・8号車の扉間に存置されています。趣味誌の記事には「構造的に他の座席種別への変更が困難」との、出来ることならロングシートに変えてしまいたかったようにも読める一文がありましたが、どうせ残すならと脚台を残して全交換し大きな改良を加えています。まず目に付くのは背摺りを大きな板で覆った点、通路側は頭部のに張り出しを設け寄りかかれるような構造にしています。背摺り自体は頭部を1人毎に独立させており、座面も形状を改めています。

st90N-ボックスシート背摺り

生地には何とスコットランド製の本革を用いるという力の入れよう、背摺りには同社のロゴを入れています。

st90N-2人掛け

ボックスシートの両側は2人掛けロングシート。聳え立つ(?)ボックスシートの背摺りは引き続き肩握りの類が無く、扉側の袖仕切の大型化と合わせボックスシートのみならずロングシート部もよく言えばプライベート感が強調される格好となりました。扉側に1人だけ座っている状況でボックスシート側が空いているとしても、そこに座りに行く勇気は管理人にはありません…


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