東武6050系

写真: tb6176

東武日光・鬼怒川線には無料優等列車として「快速」が設定されており、1964年からは専用車として6000系が活躍していました。1980年代に入ると国鉄野岩線として計画されていた路線が第三セクター野岩鉄道として開通することが決定したものの、半分以上がトンネルの導線では難燃性の観点から6000系が使用できなかった上、冷房を搭載していないことも問題になり車体更新(機器流用)して1985年に登場したのが6050系です。
2両1編成で適宜増結して運用するスタイルは6000系から変わらず、車体更新期間中は6000系との混結も実施するため流用した足回りは勿論車内設備も6000系がベースになっています。ただ車体は当時流行の所謂額縁スタイルで10030系や8000系修繕車にも踏襲されたほか、白地に赤とオレンジの帯は100系や300・350系など日光線優等車に踏襲されました。

車体更新は1986年までに6000系全22編成に施工されたほか、完全新造車として1990年までに11編成が製造されました。このうち後者の3編成は野岩鉄道、1編成は会津鉄道の所有で、車番も5桁に区分されています。主に浅草~東武日光および鬼怒川線・野岩鉄道方面の快速および栃木地区の普通列車で運用されましたが、2006年以降快速系列車が徐々に削減され2017年には完全消滅。都心から日光・鬼怒川方面への輸送は有料特急の独壇場となり、更に足回りの老朽化もあってローカル列車からも撤退が進み廃車が相次いでいます。


tb6050-車内全景

車内全景です。2扉で扉間にボックスシートを並べた構成は6000系の正統進化版と言った印象で、戸袋部のみロングシートという点も変わりません。座席配置は勿論のこと照明にはカバーが付き吊り広告も無いなど、京阪や阪急の特急車でも感じる他とは少し異なる空気が漂います。

tb6050-車端部1tb6050-車端部2

車端部です。戸袋分の奥行きしか無いのは6000系譲りですが、形式図を見ると若干奥行きが浅くなった上に妻壁が厚くなった模様。日光方先頭車にはトイレを設けているのは料金不要ながら長距離優等車の証と言えましょうか、妻面寄りには照度を補うため枕木方向の照明を設けている点に注目。

tb6050-トイレtb6050-トイレ2

トイレは浅い奥行きに丁度収まる寸法感、扉横の取っ手は設ける余裕が無くトイレの壁に設けています。壁がステンレス張りなのに驚いてしまいますが、構成は国鉄近郊型電車と大きく変わりません。

tb6050-フリースペース

その向かいにはゴミ箱があるだけ、製造時からこの位置に座席はありません。6000系では2人掛けロングシートがありましたが、便所の向かいの座席ということで評判が悪く色々検討された結果「何もなし」の結論に至ったようです。今の感覚であれば車椅子スペースと称するところですが、当時ここに何も設けなかったのは珍しかったのではないでしょうか。

tb6050-乗務員室仕切tb6050-行先表示

乗務員室仕切です。高運転台ということもあり窓は高めで座っての前面展望は厳しい上、運転台直後の窓が無いのは如何にも東武らしいという印象。本形式の特徴的な装備としては仕切戸上の行先表示幕が挙げられましょう、6000系時代から下今市での分割を案内するためこの位置に「日光線」「鬼怒川線」と書かれたプレートを掲出していたそうですが、その進化系と言えそうです。ただこれが5年、いや3年でも遅く登場していたらLED式になっていたんだろうなあ、とも思います。

tb6050-扉

扉は幅1300mmの両開き式になりました。両側ともロングシートになったことで床面積は増加しており、6000系に比べ混雑にも多少耐えられるようになったでしょうか。

tb6050-天井

天井です。車体を新造する原因になった冷房は左右2本の吹出グリルがレール方向に貫く構成。照明はカバー付き、吊革はロングシートの前のみに設置しているほか吊り広告はありません。

tb6050-床

床は茶系、通路部は柄入りです。

tb6050-窓

窓は一段下降式になりましたが、すれ違い時のバタつきが気にならないではありません。

tb6050-ボックスシート4tb6050-ボックスシート1

座席を見て行きましょう、ボックスシートは扉間に片側7か所ずつの設置です。しっかりしたフレームと赤いモケットは「重厚な」という言葉が相応しい見た目。写真は左が機器流用車、右が完全新造車(6174F)で、よく見ると背摺りの詰物形状が異なっている(後者の方が厚め)ことに気付きます。ボックスピッチは6000系の1480mmから幾分広がり1525mmになりました。

tb6050-ボックスシート2tb6050-ボックスシート3

この座席の特徴は座面と背摺りの頭部以外の詰め物を個別に分けた点でしょうか、6000系の背摺り上半分にモケットすら張っていなかったことを考えると大きな進化です。頑丈そうな肘掛も側面や肘当部はモケット張り、ただ肘当部は端部のが摩耗が目立ったのか後年樹脂製の枠が追加されています。また製造時新栃木以北では喫煙可能だったため、肘掛内には灰皿を内蔵していました(もちろん現在は撤去)。

座布団は柔らかめ、背摺りはもう少し角度があっても良かったかもしれませんがボックスピッチとの兼ね合いを考えると難しい相談でしょうか。

tb6050-テーブル1tb6050-テーブル2

窓側には小型テーブルが固定されており、跳ね上げ式の追加部分も展開すると無料列車にしては大きなテーブルになります。これも長距離列車の誂えですね、弁当は厳しいにせよグループでお菓子を広げるくらいは出来そうです。

tb6050-2人掛けtb6050-2人掛け優先

戸袋部のロングシートは2人掛けになりました。袖仕切はパイプと袖板の組み合わせ、製造時は各社で採用が相次いでいましたが当時の東武で増備されていた10000系などでは採用されておらず、細かい点でも優等車として差をつけているようです。1人当たり幅は460mm程度と広めです。


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