都営5300形

写真: toei5321

都営地下鉄最初の路線となった浅草線も開業から30年が経過した1991年、開業時から活躍する5000形の取替を目的に登場したのが5300形です。直通各社含め中央貫通路式の車両が大半だった中にあって、当初から8両固定編成を前提とした本形式は思い切って左右非対称の流線形デザインを採用。アルミ車体ながら全面塗装を実施、白地にラインカラーの赤とアクセントのダークブラウン2色の帯を配しています。制御装置にはVVVFインバーターを採用、特に高速走行を実施する京急線内で苦しい走りを見せていた5000形に対し走行性能の向上を図っています。

1997年までに8連27編成が製造されましたが、このうち1994年度製造車からはスカートを大型化し外観の印象が変化。1997年度の最終増備車では京急線内の120km/h運転に対応すべく主電動機出力を強化しました。要所の改修は実施しつつも大規模な更新は行われないまま2018年度から5500形による置き換えが開始され2021年度までに本形式と同じ8連27編成の増備が終了しましたが、本頁作成の2022年秋時点でもどういう訳か1編成のみ残存しています。運用範囲は広く浅草線は勿論のこと京成線成田空港や芝山鉄道・北総鉄道、京急線では羽田空港は勿論のこと久里浜や新逗子まで顔を出し、京成線・京急線内では長編成であることから優等列車を中心に運用されます。今回は1995年度製造の6次車の様子をご覧頂きます。


toei53-車内全景

まずは車内全景から。コンセプトの「明るくさわやかな車内」は白い化粧板と自局の同線向け車両では初となる冷房の設置で体現、その他パーツを見回しても登場した1990年頃のトレンドを一通り拾った上でアレンジを加えている印象です。

toei53-車端部1toei53-車端部2

車端部です。この時期の新造車にあって広幅貫通路の採用は珍しい印象、着席した乗客の足元に合わせたのか窄んだ下部の形状が特徴です。貫通扉は両開き式、片方を開くともう片方も連動して開きます。今回ご紹介している1995年度製造車は当初から1両1か所の設置ですが、初期車は編成中央の1か所のみ、その後2両に1か所と徐々に増えて行ったようです。

toei53-乗務員室仕切

乗り入れ他社共々設置されていた乗務員室直後の座席は乗務員室の拡大によって廃止され、仕切戸は車掌台側に寄せています。

toei53-扉

扉は両開き1300mmで化粧板張り、ギリギリまで座席が設置されており立席スペースはほとんどありません。床の黄色い滑り止めは最近お馴染みとなりましたが、座席脚台の幅に相当する面積を黄色くしたのは珍しくかなり目立ちます。

toei53-LEDtoei53-路線図

情報案内装置はLED式を千鳥配置、表示は10文字程度ですが遠くからでも見やすい大きな文字サイズが特徴。その上に控えめに設けられているのは開扉予告灯、左右に分かれているので内容が異なるのかと思っていましたが何れも「このドアが開きます」の表記でした。一方反対の扉は当初電光式マップだったようですが、現在は通常の路線図に退化(?)してしまった一方で開扉予告灯は存置しています。

toei53-床

床材は元々フットラインのあるベージュ系だったようですが、現在は張り替えられフットラインの無い柄入りの青系になりました。メリハリがあると言えばそうですが、基本的に暖色系でまとめた車内にあって浮いている感は否めません。

toei53-天井

天井です。照明はカバー無し、中央にラインデリア、その脇に空調吹出し口を設ける一般的な構成です。ただ浅草線用車両としては初めての冷房車であり、登場時は直通先含め喜ばれたことと思います。吊革は一部高さの低いものに交換しています。

toei53-窓

側窓は一段下降式。カーテンは2段階で調整可能な巻き上げ式で、隅田川のさざ波をイメージしたという模様が入ります。

toei53-8人掛け

座席を見ていきしょう、まずは扉間の8人掛けロングシートから。1人当たり幅460mmは製造当時としてはかなり広め、スタンションポールは後年の設置のようです。当初は座面が灰色でしたが後年張り替えられ、赤系の背摺りのモケットも以前とは異なるように見えます。袖仕切は同時期標準と言えるパイプと袖板の組み合わせですが、背摺り断面を覆うと共に弧を描くような形状と他には見られない厚さが特徴です。初期の車両では厚い袖板上面の金属面に帯が入れられていたようですが、今回ご紹介している後期車にはありません。

toei53-5人掛け優先

車端部は5人掛け、現在は全て優先席のため青系のモケットを張っています。扉間でも十分広かった1人当たり幅は更に広く560mmもあるそうで、バケット形状の「山」の部分の幅が扉間より広いような気がします。管理人は西馬込~泉岳寺間と短距離乗車でしたが、十分な座面厚みは地下鉄線内のみならずある程度の時間の乗車に対応できるかと思います。ただ本形式の場合は地下鉄車としては考えられない長距離・長時間運用も存在するのが何とも…

toei53-車椅子スペースtoei53-5人掛け

車椅子スペースは先頭車の扉間に設置、非常通報装置と車椅子固定金具を備えます。その横の座席は5人掛け、こちらも車端部と同様に1人あたり幅560mmのようで扉間8人掛けと見比べて頂ければその差は一目瞭然。なお初期車の車椅子スペースは4・5号車に設置、後年の改造で先頭車にも追設されています。


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最終更新:2022/11/25

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