富山地方鉄道20020形

写真: TRR20021

1993年に登場した西武10000系「ニューレッドアロー」は足回りが流用品だったことも災いしてか、2019年から001系「Laview」投入で池袋線特急「ちちぶ」「むさし」から撤退。現在は新宿線特急「小江戸」のみで活躍を続けています。
一方で車体の製造後30年足らずの出物として目を付けたのが富山地方鉄道で、2020年秋に4両が甲種輸送にてやってきました。ただ1編成を単純に縮めたのでは無く2両の先頭車は元々同じ向きですし、近年2両編成が標準になっている地鉄で部品取りを考えても4両持ってくる必要があるのか…?など頭の中にクエスチョンマークが沢山。

1年以上の改造期間を経た同車は塗装も「NRA」のロゴもそのまま3両固定編成になって2022年2月に登場、形式は地鉄初の200馬力級主電動機の採用で20020形となりました。初代「レッドアロー」の西武5000系も引き続き活躍しており両者の顔合わせも見られるほか、主要機器も西武時代のまま…今回種車となった編成の足回りはその5000系からの流用品なのですが…もある種見どころです。
折角の特急形ではありますが昨今の情勢から2021年のダイヤ改正では宇奈月温泉発の1本を除き特急が壊滅。出来上がったは良いものの、3両固定ではワンマン運転も出来ませんから今後どのように運用するのか注目です。


TRR2002-車内全景

まずは車内全景から。西武時代からほとんど変更が無く、引き続き寒色系の落ち着いた印象です。しかしこの内装でも実際はほとんどの運用が料金不要の普通列車に充当される訳ですから相当な大盤振る舞いで、折角ですので特急列車の復活が待ち望まれるところ…

TRR2002-デッキ仕切TRR2002-車端部1

客室端部を見てみますしょう、左写真はデッキ仕切・右側は2号車の車端部です。16010形では構造上どうしようもなかったと思しき部分を除きデッキ仕切を撤去していましたが、本形式は扉を常時開放しているだけで仕切の撤去まではされませんでした。2号車は扉が1か所しかありませんが、これは地鉄では珍しいような気がします。

TRR2002-デッキ仕切3TRR2002-車端部2

先頭車の連結面寄りには車椅子対応設備を設けた車両が種車で、デッキ仕切も両開き扉として開口幅を広げています。1号車は便洗面所等を存置しているため西武時代に近い見付です。

TRR2002-トイレ1TRR2002-トイレ2

便洗面所は西武時代同様車椅子対応の洋式便所と男子小用を用意していますが、運用開始時点ではまだ整備中のようで使用できませんでした。

TRR2002-洗面所

独立した洗面所も地鉄では初めてでしょうか、便所が使用できなかった運用入り直後でもこちらは使用できました。

TRR2002-自動販売機1TRR2002-自動販売機2

自動販売機も存置…しているのですが、16010形のような飲料では無く何と鉄道グッズを販売しています。1個1000円で駅名キーホルダーやタオル、チョロQに鉄道部品の組み合わせで各1000円だそうで、結構な勢いで売れていっていました。

TRR2002-デッキ仕切2TRR2002-車端部3

3号車も種車は1号車と同じ形式ですのでデッキ仕切は同様に幅広ですが、その奥は便洗面所を撤去し客室にしました。寒色系の客室に対しここだけ白基調の化粧板に暖色の床敷物、そして窓が一切無いことや元々のダウンライトを生かした照明など些か異質な空間です。

TRR2002-デッキ仕切3

扉上に設けられていたLED式の情報案内装置は撤去されてしまいました。

TRR2002-運賃表1TRR2002-運賃表2

代わりと言っては何ですが、運賃表が各車1か所ずつ設置されました。先頭車は盤面が灰色、中間車は黒色で、前者は廃車発生品でしょうか。

TRR2002-乗務員室仕切

乗務員室仕切です。元々は窓が一切ありませんでしたが、車内で運賃収受をするには不便ですので運転台直後と仕切戸に窓が設置されました。なお3両編成ですのでワンマン運転では無く車掌が乗務しており、運賃箱はどちらかと言うとICカードを読み取るための装備と言った感があります。

TRR2002-扉1TRR2002-扉2

扉は通常部が幅870mm、先頭車の連結面寄りは幅1000mmです。前者は先頭車先頭部の様子で、デッキ仕切を存置した上に運賃箱までありますから余裕の無い配置です。16010形の折戸に比べれば良いかもしれませんが、何れにせよ通勤通学輸送には凡そ適さない構造です。

TRR2002-扉3

3号車連結面寄りの扉は白系の化粧板を貼っており、印象が随分異なります。

TRR2002-天井

天井は全く弄っていない様子、カバー付照明が切れ目なく2列に並びます。

TRR2002-窓

窓は2席で1枚、西武時代の横引き式カーテンをそのまま使用しています。

TRR2002-床

床は前述の3号車車端部を除き青灰色の柄入り。抵抗制御車ということもあって写真の電動車では点検蓋が設けられており、この度電装された3号車にも蓋が新設されました。

TRR2002-2人掛けATRR2002-2人掛けA展開

座席は車椅子対応席を除き2人掛けの回転リクライニングシートを継続使用しています。座席は2004年からの車内更新工事で載せ替えていますので比較的新しく、回転が若干重いような気がしますが状態も悪くないように思います。シートピッチは1070mmで新幹線をも凌ぐ数値、西武でも1度乗車しましたが改めて前の席までの広さというか余裕を感じます。

TRR2002-2人掛けBTRR2002-2人掛けB展開

先頭車連結面寄りの2列目(1人掛けの車椅子席直後)はテーブルが無くなることを救済するためインアームテーブルを設置しています。これは西武時代の車内更新工事の途中から設置されるようになったそうで、今回富山にやってきた編成でも3号車の種車であるクハ10102号は確かインアームテーブルが無いグループだったような気がするのですが…

TRR2002-座席背面

背面にはテーブルと網ポケット、それにドリンクホルダーを設置。フットレストバーは角度を上下に調整することが出来ます。

TRR2002-1人掛けTRR2002-1人掛け展開

3号車には車椅子対応の1人掛け席を設置。後述の通り座席を撤去しての車椅子スペースも設けていますが、こちらも車椅子固定ベルトを存置しており車椅子スペースと案内されています。

TRR2002-4人掛け優先

歴史は繰り返すと申しますか、3号車の車端部には元々の座席を横に向け配置した箇所があります。優先席とされており、座面は地鉄標準の赤いモケットを用いています。座席は壁ギリギリに設置されている上、リクライニングボタンが撤去されているためリクライニングは出来ません。少しでもリクライニングした状態であればもう少し座りやすかったかと思いますが…

TRR2002-車椅子スペース

1号車には座席を撤去した車椅子スペースが用意されています。車椅子対応席とは別にこのような区画を設けている辺り、車椅子の利用がある場合は先にこちらを案内するのではないかと思います。
元々は反対側にも同様に1人掛け席がありましたが、こちらには2人掛け座席を設置しています。2列目のインアームテーブル付座席はそのままですので、改造車らしい少々不思議な状況が生まれています。


TRR2002-運転台

運転台です。元々仕切戸に窓が無く運転台を見ることは出来なかったので前後の比較は難しいですが、どうやら車内確認用カメラのモニタを追設した程度のようです。


FTN trainseat.net>中部地方私鉄目次に戻る

inserted by FC2 system