JR東海 キハ85系(「南紀」仕様)

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1988年に量産先行車が登場、1990年に「ひだ」を一挙に置き換えたキハ85系ですが、JR東海の非電化区間に向かう特急としては「南紀」がキハ82系のまま残っていました。そこで1992年には「南紀」全列車を置き換えるため増備が行われましたが、初の全室グリーン車キロ85形を筆頭に普通車も全て新区分番代を起こすなど「ひだ」用とは切り離して考えられていたようです。もっとも外観は「ひだ」用と同様のステンレス製車体、もちろん窓を可能な限り大きく取り「ワイドビュー」の愛称を付与されています。カミンズ社製の大出力エンジンはここでも威力を発揮、大した線路改良もしていないのに名古屋~紀伊勝浦の所要時間を40分以上縮める快挙を成し遂げています。

ただ全室グリーン車を筆頭に「南紀」としては供給過剰な感もあり、2001年には「南紀」のグリーン車連結が多客時のみ(それも「ひだ」用の半室グリーン車、2009年から通年連結に)に変更されキロ85は「南紀」に帰ってくることはありませんでした。現在は製造時の「ひだ」用「南紀」用と言った区分は完全に廃され、本頁で紹介する内装の車両は主に「ひだ」に充当されています。

★「ひだ」用として登場した車両(赤・青のモケット)はこちらから


■客室(普通車)■

85BF-車内全景

車内全景です。赤や青だった「ひだ」用の派手な色合いから一転、全車とも灰色基調のモノトーンな内装になりました。

85BF-デッキ仕切85BF-デッキ仕切2

デッキ仕切です。仕切戸だけ少し濃いめの灰色としたほか、扉の窓は「ひだ」用と同形状ながら上下を分ける横梁を黒くして一体感を出しています。右写真は1両のみ存在する1200番代の様子。

85-LED2

仕切上にはLED式の情報案内装置を設置。「ひだ」用では横長タイプと上下二段に分けたタイプの2種類があり場所に応じ取り付けられていましたが、本グループでは設置場所問わず前者に統一されています。

85BF-天井

天井はカバー付き照明を中央寄りに配置しています。形状こそ「ひだ」用と変わりませんが、本グループは左右照明間のパネルを黒から周囲と同色に変更しています。

85BF-通路

床はカーペット敷、座席部分は通路から200mm高い位置にあります。

85BF-窓85-窓テーブル

窓は「ひだ」用と同様縦950mmと大きなもの、横引き式のカーテンは生地色が変更されています。本グループのみの装備として、座席を向かい合わせにした際の配慮か窓柱の位置に小型のテーブルが設置されています。ただ体勢によっては足を打つこともあるので要注意…

85BF-2人掛け85BF-2人掛け展開

座席を見て行きます。全体的に灰色系でまとめており印象は一変しましたが、基本的な造りは「ひだ」用として登場した車両と大きく変わった訳ではありません。ただ背摺り詰物の形状が変わっているのか、「ひだ」用で感じた頭部回りの造形の独特さは無くなっています。掛け心地は4時間余り掛かる富山~名古屋間の乗り通しにも耐えられるもの。

85BF-2人掛け背面

「ひだ」用と異なるのは座席背面で、樹脂パネルで覆うのを止めています。テーブルは元々こんな色だったのでしょうか、黄色味を帯びています。なお運行情報サイトに関するステッカーが無いのは単に古い写真のため。

85BF-1人掛け85BF-1人掛け展開

車椅子対応改造は基本的にキハ85形100番代に施工されましたが、車両需給の関係か1両だけ200番代にも施工され1200番代となりました。上記のモケット違いと思われ、背摺り形状は何となく「ひだ」用に近いような気がします。


■車内(グリーン車)■

85G-車内全景

車内全景です。大型の座席が2列+1列の配置で並んでおり、既に「ひだ」用キロハ84形とは比較にならない印象。普通車とグリーン車で色調を変えることでイメージを変えていた「ひだ」用に対し、こちらは普通車と共通のモノトーンな色調です。

85G-デッキ仕切85G-荷物置場

デッキ仕切です。手前には狭いながら荷物置場を設置しています。

85G-乗務員室仕切

乗務員室仕切です。「南紀」用の非貫通先頭車はこの車両のみ、キハ85形0番代に比べ窓枠を廃すことでよりクリアに前面展望を楽しむことが出来ます。

85G-LED

LED式の情報案内装置は普通車と同様横長タイプ。

85G-車端テーブル

仕切にもテーブルとフットレストを設置しています。後述しますがシートピッチのことを考えると特にフットレストなどはこちらの方が使いやすいかもしれません。

85G-天井

天井は普通車と同様の造り。

85G-床

床は普通車と同様のカーペット敷き。

85G-窓85G-補助灯

窓は普通車と同様高さ950mmの大きなもの。注目はカーテンで、陽を遮るカーテンだけでなくレースカーテンも備えています。荷棚は普通車と類似の構造ながら、読書灯を設置しています。

85G-2人掛け85G-2人掛け展開

座席は2人掛け席から見てみましょう。「ひだ」用とは打って変わってどっしりとした大きな座席で、十分な横幅を確保したのは勿論のこと、シートピッチは破格の1250mmを誇ります。

85G-2人掛け背面85G-フットレスト

座席背面です。背面テーブルは手前に引き出す機構は無く正直使い辛い印象。フットレストはキロハ84形より単純な反転式になっていますが、これまた展開したところで随分遠い位置になります(小柄な管理人では全然足が届きませんでした)。土足面と土足禁止面の色の違いが僅かで分かり辛いのもあまり良くない気がします。

85G-1人掛け85G-1人掛け展開

JR東海の在来線では数少ない1人掛けのグリーン席です。他はと言うと今は無き371系くらいでしょうか、ただあちらは些か特殊な事例のように思います。その後登場した383系なども見ているとJR東海の在来線グリーン車の基本は4列のように見え、正直やりすぎな感も無いではありません。個人的には背面テーブルやフットレストが遠すぎて使えないのは大きな減点ポイントで…

85G-暖房

座席と腰板の間の床には暖房の吹出口が独立して設置されています。床を嵩上げしており座席下に暖房を仕込めなかったが故の構造でしょうか。


■デッキ・その他設備■

85B-扉85B-扉2

本グループはデッキもモノトーンな仕上げ、照明はダウンライトから一般的なものに変更されています。左はグリーン車キロ85、右はキハ84形200番代の扉で、後者は車椅子に対応するため幅を広く取っていますが車椅子対応席などは特に用意されていません。

85BF-トイレ185BF-トイレ2

トイレは「ひだ」用とは扉位置が異なるほか便器や手洗いの形状も変更されています。手前は用具入れでしょうか、形式図には「荷物室」とありますが…

85G-トイレ1

グリーン車(キロ85形)は洋式トイレ。

85BF-トイレ485BF-洗面所

向かって左側には従来通り洗面所が、加えてその奥には「ひだ」用には無い男子小便所も設置されました。

85BF-自動販売機

自動販売機はキハ84形300番代に設置。キハ85系中最大となる定員72を誇る車両で、自動販売機以外にこれと言った設備はありません。

85B-車販準備スペース85B-業務用室

「南紀」用として投入されたキハ84形200番代には車販準備室を設置。向かって左側は売店としての機能も想定してかカウンターも設けており、0番代よりも大掛かりな設備としています。

85G-運転台

運転台は2ハンドル式。大きな窓のお陰で良好な眺望が楽しめますが、写真では折からの雪もあって外の景色が白く飛んでしまいました。


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