京急新1000形(3~5次車)

写真: kq1041

仕様を変えつつ20年近く増備が続いた京急新1000形、数が多すぎて最早アルミ車体のグループは全て「初期車」と一括りにしたくなる勢いではありますが、今回は足回りを大きく変更した3~5次車をご紹介します。外観は2次車と同様扉間の窓が1枚になり、中央扉があることを除けば2100形に極めて近い印象を受けます。一方足回りはと言うと従来MT比が8連は4M4T・4連は2M2T、制御装置は起動時音階を奏でることでお馴染みのGTO素子を用いたVVVF制御でしたが、高加速を誇る京急では雨天時等心許なかったようで電動車を4両に1両追加して安定した走りを実現しました。

2005年から翌年にかけ8連4編成・4連8編成が製造されましたが、伝統の赤い塗装の電車は本グループで打ち止め。2007年春には形式こそ同じながらステンレス車体を採用した編成が登場し、人々を驚かせることになります。


kqN10ALB-車内全景

まずは車内全景から。3次車からの変更点は主に機器構成の変更であり、車内は一見したところ1・2次車と大きな変更はありません。登場した頃は700形が最後の活躍を見せていた頃、旧1000形は後期車がほぼ健在の時期で、暖色系の内装は新車の証と言えるような状況でした。

kqN10ALB-車端部kqN10ALB-車端部2

車端部です。変更点としては貫通路の座席上、かなり高い位置に手摺が設けられたことが挙げられます。これは後述する座席形状の変更で座席肩部の取っ手を無くしたため…ではありますが、妻面には機器を収納しているのか幾分厚みがありますのでここまで高い位置である必要は無いように思います。
また写真では気づくことの出来ない変化点として、貫通扉は従来8両に3か所・4両に1か所のみ設置していたところ、本グループ以降は浦賀方先頭車を除く各車南方に設置するよう改められました。これは2003年に韓国で起きた地下鉄火災を受け日本でも基準の強化が行われた結果で、同様の理由で仕様が変更された箇所が他にも複数存在します。

kqN10ALB-乗務員室仕切

乗務員室仕切です。窓は幾分小さめながら前面展望には十分、仕切戸は開戸で運転台側に開きます。写真の写りが微妙で申し訳ありませんが、化粧板は前掲した車端部と同じ少し濃い目の色です。

kqN10ALB-天井

天井です。蛍光灯はカバー無し、やはり枕木方向の吊革の多いのが目立ちます。写真では見えませんが所々にラインデリアを設置しています。なお冷風吹出口とラインデリアや換気扇の整風板は火災対策でアルミ製に変更しています。

kqN10ALB-床

床は明灰色、扉付近は写真でも左右に少しだけ写っているように砂目柄の滑り止めを敷いています。

kqN10ALB-扉

扉は両開き1300mm、引き続き化粧板を貼っています。

kqN10ALB-LED

情報案内装置はLED式で全扉上に設置。表示可能文字数は全角7文字と少なめですが、文字サイズは見やすい大きさです。

kqN10ALB-窓kqN10ALB-窓2

窓は引き続き全て固定式ですが、2次車以降は扉間の窓も大きな一枚物になりました。カーテンは巻き上げ式で3段階での調整が可能ですが、扉間の窓に間柱が無いことから分かる通りカーテンまで大きな一枚物になってしまいました。JR西日本の103系や201系の体質改善車が2mに迫ろうかと言う幅で相当大きく感じたものですが、こちらは更に300mm近く幅広ですから圧巻。操作性は悪くありませんが、自分などは他の乗客を気にして閉めることを躊躇してしまいそうです。

kqN10ALB-8人掛け

座席を見ていきましょう、まずは扉間の8人掛けロングシートから。1人あたり幅455mmのバケットシートですがバケット形状は控えめで、厚みのあるしっかりした座面に拘りを感じます。スタンションポールは5人と3人の間に設置、一時の東急などと同様にしっかり間仕切りも入れている点が特徴です。

kqN10ALB-ボックスkqN10ALB-ボックス優先

ほぼ従来通りのロングシートに対し、ボックスシートは1・2次車で2100形と同様に背摺り・座面とも1席ずつ独立していたところ、いずれも2席が一体になりました。元々1765mmとかなり広めだったボックスピッチは1815mmまで拡大、座布団両端間も100mm近く広がっており物理的な狭さはほとんど感じません。背摺りは固定座席ならではの自然な形状、座面は1次車で気になった座面の妙な固さを感じる箇所が無くなった分だけ良くなっているように思います。少し気になるのは窓際のスペーサーでしょうか、形状をもう少し工夫できれば…と思ってしまいます。
なお右写真は優先席、青モケットと銀の枕カバーが通常席との違いを明確に示します。ただ窓側と妻面のスペーサーは通常席と同様のモケットを使用しておりちぐはぐな印象、一方で通路側肘掛の袖部が青いのは通常席も共通でこれまた何だか不思議な感じがします。

kqN10ALB-補助座席

ボックスシートの形状変更に合わせて補助座席も同様に変更されており、他社のこの手の補助座席と同様に座面が箱に収納されるタイプになりました。重さを掛けていないと畳まれるタイプなのは相変わらず、写真をよく見ると分かる通り背摺り上部の表示灯が点灯していますから座席を引き出した様子を見ることも出来ませんでした。

kqN10ALB-2人掛け

乗務員室直後は2人掛け、ロングシート部は従来車とほとんど同一です。この位置に座席を設置したのはこのグループまで、ステンレス車体になった次のグループからは乗務員室拡大の煽りを受け廃止されてしまいました。

kqN10ALB-車椅子スペースkqN10ALB-5人掛け

先頭車には車椅子スペースを設置、火災対策の強化に伴い消火器が追加されています。その脇は5人掛けのロングシート、袖板は樹脂製ながら高さの低いもので、もしかすると8人掛けの間仕切りと共通品なのかもしれません。

kqN10ALB-袖仕切

個人的にお気に入りなのがこの袖仕切。斜めに処理されていることの多い下端がほぼ平行になっており、この手の大型袖仕切では珍しく肘掛としての機能も持っているのです。独自性を出しやすい部品なのか各社形状を工夫している印象のある袖仕切ですが、この造りは目から鱗でした。

kqN10ALB-運転台

運転台は両手ワンハンドル式、右手に見えるモニタは後年設置されました。


FTN trainseat.net>京急新1000形(1次車)を見る
FTN trainseat.net>関東私鉄インデックスに戻る

inserted by FC2 system