名鉄5300・5700系|FTN trainseat.net

名鉄5300・5700系

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今回ご紹介するのは、気がつけば名鉄最後の2扉・転換クロスシート車となってしまった5300・5700系です。1955年の5000系から続く2扉・転換クロスシートの思想を受け継いだ「SR車」として1986年に登場しました。表題の通り5300系と5700系があるのですが、5700系が6500系の機器をベースにした純粋な新車であるのに対し、5300系は何と前述した5000系と同グループの5200系から足回りを流用した形式です。5700系は4連5編成を製造しましたが、後に2編成が6連化。また5300系は4連8本と2連5本が製造されました。

登場時は急行を中心に使用され、一部指定席特急の自由席部分として使用された時期もありますが、2扉と言うこともあり普通を中心とした地味な運用が長く続いていました。特に5300系については、多くの機器を取り替えたものの老朽化は否めず、2011年までに4連3本・2連4本が廃車となりました。また、5700系は4両と6両があったのですが、6両の編成は中間2両を抜いて4両になってしまいました。ところが、抜いた中間2両×2ユニットで4両 を組み、廃車した2両編成の前頭部を接合した珍車も登場、2011年には廃車が出たかと思えば平日昼間の河和・知多新線特急が全車一般車になり、その運用に抜擢されるなど新たな活躍も見せました。とはいえ2扉車の扱い辛いことに変わりはなかったようで、両形式とも結局2019年までに引退。1955年以来60年以上の伝統があったSR車も終幕となりました。


57-車内全景

車内全景、写真は先頭車の様子です。まずは扉横の座席の前に衝立が出来た点、これはSR車史上快挙と言えるレベルです。またそれに関連して、扉付近はかなり広めに取ってあるほか車端はロングシート。輸送の実態を十分検討していることが伝わってきます。

57-車端部

その車端部です。構成は当時増備が進んでいた6500・6800系と同じですが、化粧板の色が違うだけで全く別物に見えます。

57-乗務員室仕切

乗務員室仕切です。運転台側の窓は6500・6800系と同じサイズですが、中央の扉や右側は窓を最大限大きく取っています。車掌台側の白い箱は運転状況記録装置です。これの設置で眺望は悪くなってしまいましたが、乗務員室を見てみるとこのような大きなものを置くにはこの場所しか無いようです。

57-スピードメーター

速度計です。ちょうど同年に工事が始まった7000系2次特急化改装車の展望室に設置されていたものと同じのものです。

56-天井

天井です。中央にラインデリアを装備し、随分と外側に蛍光灯があります。蛍光灯は同時期の通勤車6500・6800系とは異なりカバー付きです。

56-床

床は6500・6800系と同じく赤と灰色を用いていますが、この系列では通路を赤、それ以外を灰色にしています。編成によっては随分色褪せてしまっている場合もあります。

57-窓

窓はパノラマカーの伝統を引き継ぎ連続窓としています。カーテンは横引き、荷棚はパイプ式ですが、この荷棚は7000系第2次特急改装車にも使用されています。

56-扉

扉は数が少ない代償として、通勤型より大きい1400mmとしています。窓ガラスは通勤車と同等のサイズです。

転換クロスs向かい合わせs

座席を見ていきましょう。SR車と言えばクロスシートですが、車端はロングシートなので本系列では扉間と運転室直後にのみ設置されています。座席自体は7000系後期車に近いですが、背摺りが少し大きくなったように感じます。肘掛は1枚板から、国鉄117系などに似た八角形のものになりました。シートピッチは引き続き900mmです。
右側は向かい合わせにした様子です。乗務する車掌にもよりますが、乗客が少ない方向の列車では転換の手間を省くために向かい合わせにする光景をよく目にします。

57-足元s

座席は白い台座に載っていて、足を前方に伸ばすことはできません。

57-2.5人掛け_2s57-先頭展望部s

先頭車の車掌台後方には、所謂「2.5人掛け」と呼ばれる大型の座席が備わっています。これは大人1人と子供2人が座れるように配慮されたもので、幅は通常席が955mmなのに対し1085mmとしています。また、2列目から展望を利かせるために1列目の背ずりが低くなっています。

57-5人掛け57-5人掛け優先

車端部は混雑緩和の為にロングシートとしています。まずは1986年夏に登場した5700系の3編成などで、背摺りがほぼ垂直です。優先席は背摺りを青のモケットに変えています。

57-5人掛け257-5人掛け優先2

続いて1986年後半に製造された車両です。背摺りに幾分傾斜がついたように見えます。

53-5人掛け優先2

1987年には5300系の2連4本が製造されましたが、こちらは背摺り・座面ともバケット形状を意識した仕上げです。なおこの座席を装備した車両は全て廃車されています。

袖仕切りは名鉄100系に始まり国鉄201系で完成された板とパイプを組み合わせたものですが、他では横に伸びているパイプも板にしています。また車端の 窓は下降窓ですが、外から見ると間の柱を連続窓風にしています。この2点は1989年登場の6500・6800系「金魚鉢」から2000年の3100系3次車まで続く、名鉄の標準となりました。本系列はクロスシートばかり注目されがちですが、今度乗車される際には是非ロングシートも見て頂ければ、と思います。

仕切りs補助状況s

扉と座席との仕切りです。補助座席を仕込んでおり、これを使用すると着席定員が1両当たり8人増えることになります。補助座席は混雑時にはロックをかけることが出来、使用可能な場合はランプが点灯して知らせてくれます。

57-補助座席展開s仕切り後足元s

先ほどの注意書きの通り、座席には重さが掛かっていないと畳まれてしまうのですが、たまたま固まってしまっているのを見つけました。補助座席は後の1200・1800系にも設けられていますが、背摺りや座面の縫込みが無いほか、座面の縁の形状も異なっています。また座席の側に回ってみると、足元が板で塞がっていることが分かります。

モケットs

最後にモケット。1200系に採用されたものに交換されています。7000系の仕切りの部分でも書きましたが、この形式のクロスの肘掛の裏側(あまり見ない内側)をよく見ると赤のまま残っています。数少ない証拠品!?

5300運転台s

運転台はブラックアウトされた新しいもの。このタイプの運転台は6500・6800系「金魚鉢」や1000系列に受け継がれました。


5700系(5600形)

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冒頭にも書きましたが、6連だった5700系の4連化で余った中間車に廃車した5300系の前面を接合し新たな編成を仕立てました。この車両は1989年製造と5300・5700系のグループでは最後に登場した車両で、5300系とも5700系とも違う足回りなのです。5300・5700系は先頭車と中間車で側面配置が異なりますので、この車両が出てきた時は随分違和感があったものです。1編成のみ存在し、他の5300・5700系と同様に使用されています。

56-車内全景

まずは車内全景ですが、この角度で見ても他の中間車と何も変わりません。

56-乗務員室仕切

乗務員室の仕切りです。運転席直後は立席スペースとなっているため手摺りが増設されましたが、扉横のものがそのまま仕切まで伸びています。

56-立席スペース

その気になれば2人掛けの座席を設置することも出来たと思いますが、乗務員室の後ろは立席スペースとしています。車いすスペースにも指定されていません。

56-切り継ぎ床

切り継いだ証拠と言える部分がこれ。床の色が見事に違っています。手前が元からの部分、奥がかつて5313Fだった部分です。

56-5人掛け56-優先5人掛けs

車端のロングシートです。この車両が登場した1989年、6500・6800系の増備は所謂「金魚鉢」に移行していました。そのため座面の傾斜が大きく、背摺りは「く」の字のような形をしています。右側は優先席ですが、鮮やかな青の背摺りは新たに優先席とされたク5601の岐阜方の様子です。

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