西鉄8000形|FTN trainseat.net

西鉄8000形

写真: ns8011

1972年に登場した特急車2000形は印象的な塗装と特徴的な前面スタイルもあって、文字通り西鉄の「顔」として活躍してきました。1980年代後半にそろそろ経年が目立ってきたところ、並行する国鉄鹿児島線は分割民営化しサービス向上に熱心、また1989年には福岡市で「アジア太平洋博覧会」の開催も決定したことから、一気に新特急車の投入の方針となり登場したのが8000形です。6両固定編成で片側2扉の扉間転換クロスシート車というのは2000形と同様ですが、前面の強い傾斜角と大きな窓、そして乗務員室直後に3列設けられた展望席は新たな西鉄特急の魅力となりました。塗装は地色を2000形の黄色から白に変更、赤帯も窓回りや裾にも配し一目で特急車と分かる外観です。一方で足回りは電気指令式ブレーキを初採用したものの5000形が基本と堅実な設計、その5000形は2000形がベースですからそんなに変わっていないでしょうか。

長らく特急を主体に活躍してきましたが、走行距離が伸び老朽化が進行したため2015年より3000形に置き換えられる形で廃車が始まりました。製造から30年を待たずに廃車と言うことで西鉄電車では異例の短命となってしまいましたが、足回りや先頭車の扉配置のことを考えると2000形のような格下げに旨味が無かったのかもしれません。加えて特急の停車駅増加による乗降時間増加も遠因にあったでしょうか、晩年には太宰府線向け観光列車「旅人」や特急運用への充当は続くものの観光列車風に仕立てた「水都」も登場しました。これら観光列車も3000形に引き継ぎ、2017年に全車が引退しました。今回は2008年撮影の通常仕様車と、2016年撮影の「旅人」「水都」の様子を併せてご覧いただきます。


NS80-車内全景

まずは車内全景から。先代の特急車2000形の様子は写真で見たことしかありませんが、2扉・転換クロスシートの車内は割と飾り気の無い印象を持ちました。実は色調も大きく変わっている訳では無いようなのですが、造りの違いと登場時の世間の空気もあるのか高級感漂う車内に仕上がっています。

ns800T-車内全景ns800S-車内全景

観光列車「旅人」「水都」は号車ごとにテーマカラーやラッピングの文様が設定されていました。左は太宰府観光列車「旅人」の2号車(モ8052)、右は柳川観光列車「水都」の4号車(モ8064)の様子です。

ns800-車端部

車端部、写真は「旅人」の様子ですので化粧板が変更されています。妻窓付きで広幅の貫通路の構成は2000形や5000形を踏襲、流石に妻窓は固定式とされています。

ns800-車端部2ns800S-車端部2

1980年代末から90年代前半にかけ、大手私鉄の無料特急などにもカード式公衆電話を設けていた時代がありました。本形式もその流れに乗った格好(?)で、大牟田方から3両目の福岡方車端にロングシート1人分を削って公衆電話を設置。もっとも期待したほど利用が無かったうえに、割と直ぐに携帯電話の時代が到来しましたから2000年頃に撤去されブースだけが謎の立席スペースとして残る格好となりました。

観光列車「旅人」「水都」では中途半端に残っていた電話ブースを撤去、「旅人」(左)は大宰府・「水都」(右)は柳川の土産物を展示するキャビネットを設置しました。反対には乗車記念のスタンプも設置、ささやかながら観光列車の雰囲気を出しています。

ns800T-展示スペース1ns800T-スタンプ台

まずは「旅人」の様子。太宰府の名産品と言ってもそう色々あるわけでも無いようでキャビネットは小さめ、どちらかと言うとカウンター然としています。妻壁にパンフレットラックを設けた関係で奥は窓側に入ることも可能です。

ns800S-展示スペース1ns800S-展示スペース2

一方「水都」はキャビネットを大きく取り、展示する土産物も多めです。柳川と言うとウナギの蒸篭蒸しが有名で、下段はウナギ関連の土産物が占めています。一方上段は味噌や醤油、「相撲味噌」は柳川出身の琴奨菊関をイメージしたものでしょうか。そして「ムツゴロウの甘露煮」なんてのもありますが、ムツゴロウって食べられるんですね…

ns800T-乗務員室仕切

本形式最大の魅力である先頭部、写真は「旅人」の様子ですので壁にラッピングしてあります。先頭部レイアウトは本形式登場の3年ほど前に登場した名鉄5300・5700系でも見られますが、こちらは側窓を縦1,050mm×横2,660mmと破格の大きさとした点が特徴。着席時はもちろんのこと、側窓はこの大きさですから通路に立っていてもその眺望は中々のもの。

ns800-前面展望

最前席からの眺めはこんな感じ。乗務員室は前面傾斜角が大きいこともあって想像以上に広く取られていて、「前面の風景が迫ってくる」と言う感覚とは少し違う印象でした。とはいえ人気区画であることに変わりはなく、自分も福岡駅での争奪戦に参加しましたが、空いていても展望席だけは割と乗客が居る様子も見受けられました。

ns800-LED

情報案内装置はLED式で車端部貫通扉上に設置。全編成とも製造時には無い状態で登場していますが、翌年までには全編成への取付が終了しています。内容は列車案内や次駅案内が主で、写真の観光列車「旅人」では内装の紹介も行われていました。

ns800S-天井ns800T-天井

天井です。集約分散式冷房の採用で天井は平天井式に、また蛍光灯はカバー付きとしています。左は「水都」で天井にラッピングを施していますが、右の「旅人」では照明カバーにもラッピングしています。

ns800-床ns800S-床

床は茶系の単色が標準でしたが、「水都」では各車のテーマカラーに合わせたような色合いに変更されていました。

ns800-窓

窓は扉横の2列分を一段下降式、それ以外を固定式としています。大牟田線の電車は長らく2段窓が続いており、1段窓の電車と言うと先々代の特急車1000形の一部(1200形)まで遡ることになるでしょうか。カーテンは横引き式が標準ですが下降窓の箇所は巻き上げカーテンも併設、これは京急2000形でも見られた配慮です。荷棚は前飾り付きで高級感を演出しています。なお写真は「水都」の様子で、カーテン地を変更しているほか、荷棚の上に模様入りステッカーを貼ったり観光案内の掲出をしたりしていました。

扉は幅1300mm、戸袋部をほぼ全て立席スペースとして混雑にもある程度対応します。写真は「旅人」の様子、号車番号の文字にオンマウスで各車の様子をご覧いただけます。
1号車(貝合わせ文様) 2号車(七宝文様) 3号車(波兎文様) 4号車(矢羽根文様) 5号車(亀甲文様) 6号車(梅文様)

ns800T-化粧板文様

「旅人」扉上に掲出された各車の車内ラッピングに用いられた文様の紹介です。

ns800T-開運カード

また車内では乗車記念の「開運カード」も配布されていました。

ns800-クロス(転換)

座席を見ていきましょう、転換クロスシートは扉間と先頭車展望席に設置されています。バケット形状で背摺り・座面とも厚めですが特に背摺りの厚さが際立ちます。シートピッチは900mmと2000形同様、この時期ですと脚台の形状を工夫して前席下に足を投げ出すことが出来る車両も多くなっていましたが、本形式の足元は塞がっています。肘掛にもモケットを貼っており、レール方向に入った帯がアクセントになっています。

ns800S-クロス1ns800S-クロス2

「水都」では枕カバーに車両・場所によって異なるアクセントカラーを入れていました。

ns800-クロス(固定)ns800T-固定座席背面

扉横は固定座席としており、座面が自然な傾斜になっています。扉側は樹脂製カバーで覆っていましたが、「旅人」では「千梅ちゃん」なるキャラクターが各車で何か言っています。曰く「いろんな災いがふりかかりませんよーにー♪」随分アバウトな上に軽いですが…

ns800T-クロス(転換)ns800T-クロス(固定)

展望席部は背・座とも前方に向かうにつれ低くなるよう造られています。「旅人」では展望席部の座席モケットを変更、茶系に梅文様が入っています。

NS80-3人掛けNS80-優先3人掛け

車端部は2000形に続いて混雑緩和のため3人掛けロングシートとしています。袖仕切はパイプと袖板を組み合わせたタイプで、板の部分は両面にモケットを貼っています。優先席は他形式と同様の青系として区分しています。

ns800-運転台

運転台はワンハンドル式を初採用、以後の西鉄電車の標準となりました。


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